大相撲初場所13日目(20日、東京・両国国技館)、大関稀勢の里(30=田子ノ浦)が大関豪栄道(30=境川)の休場により不戦勝。幕内唯一の1敗を戦わずしてキープし、賜杯レースで単独トップの座を守った。悲願の初優勝が一気に現実味を帯びてくるなか、もう一つの注目を集めるのが綱取りの行方だ。果たして「初V」と「横綱昇進」の同時達成はあるのか。

 不戦勝後の稀勢の里は「今日は今日、明日は明日。集中してやるだけ」といつも通りの言葉を口にして表情を引き締めた。横綱白鵬(31=宮城野)に対し1差のリードを堅守。悲願の初優勝が目前に迫っているが、優勝争いと並んで、大きな注目を集めるのが綱取りだ。横綱昇進の条件は「大関で2場所連続優勝、または準ずる成績」と定められている。

 日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)は審判部の判断に委ねる構え。実質的に審判部→横綱審議委員会の2段階で綱取りの可否が議論されることになる。審判部長の二所ノ関親方(60=元大関若嶋津)は「優勝したら(審判部の)皆と話をします」と明言。優勝を条件に審判部内で綱取りについて協議の場を設ける考えだ。

 横審の守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)は「稀勢の里にいい風が吹いている。このまま(1敗のまま)いってもらいたい」と期待する一方、個人的な見解として「(綱取りの可否は)星数も見たい。13勝で優勝の場合? 非常に判断が難しい。議論になると思う」と述べた。現時点での“ムード”を見ると14勝で優勝なら横綱昇進が濃厚だが、13勝どまりなら審判部や横審で意見が分かれる可能性は高い。

 また昨年11月の九州場所での成績をどう考えるのか。優勝した横綱鶴竜(31=井筒)の14勝に次ぐ12勝。展開的にも優勝争いに加わったとは言えず、星数も2差と開きがあった。あくまでも結果的に「優勝次点」となったに過ぎないが、3横綱を撃破して強烈なインパクトを残し、年間最多勝(69勝)となった点も無視はできない。どう評価するかは、審判部や横審の判断次第となる。

 稀勢の里にとっては、横綱昇進の可能性を少しでも高めるためにも確実に14勝でフィニッシュしたいところ。千秋楽の結びの白鵬戦が和製横綱誕生の大きなカギを握ることになりそうだ。