大相撲春場所千秋楽(26日、大阪府立体育会館)で本割、優勝決定戦と大関照ノ富士(25=伊勢ヶ浜)に連勝し、大逆転で2連覇を飾った新横綱の稀勢の里(30=田子ノ浦)が、表彰式で号泣した。

「君が代」が館内に流れると、稀勢の里は涙が止まらない。その後のインタビューでは「すいません。今回は泣かないと決めたんですけど…。自分の力以上のものが最後は出た。諦めないで最後まで力を出してよかった」と胸の内を明かした。 

 13日目に横綱日馬富士(32=伊勢ヶ浜)との一番で左肩から上腕にかけて負傷したが、14日目、千秋楽と強行出場。この日の朝は2日ぶりに稽古場に降りて、四股や立ち合いの確認など約30分にわたって入念に体を動かした。報道陣は完全にシャットアウトし、ピリピリとした緊張感を漂わせながら、ひたすら勝負への集中力を高めた。

 日本相撲協会の八角理事長(53=元横綱北勝海)は「今後に語り継がれる逆転優勝。二本差されて絶体絶命の状況から。最後まで諦めないことが大切。本当に大したもの。昨日、一昨日を考えると、こうなるとは思わなかった」と最大級の賛辞を送った。

 初場所後の横綱昇進決定時には、優勝回数1回での昇進に角界内でも少なからず疑問符がつけられた。しかし、稀勢の里は自らの力で正真正銘の横綱であることを証明してみせた。