セリフなどの言葉を発さないノンバーバル舞台「ALATA(アラタ)」(東京・有楽町オルタナティブシアター)に出演中の女優吉田美佳子(18)を取材した。

 先月7日開業の同シアターのこけら落とし公演としても注目される舞台で、美しい白い着物に身を包んだ戦国時代の姫、千代姫を演じる。ステージでみせた表現力の高さは抜群で、醸し出す透明感にも驚いた。同舞台もオーディションで出演をつかみとるなど、若手の期待の注目株だ。

 今回の舞台は20年東京五輪・パラリンピックへ向けた訪日外国人の増加をにらみ、外国人にも理解しやすいよう、セリフはほぼない。その中で、敵に襲われるシーンでは躍動感ある動きで感情を表現し、お辞儀など日本人特有の動きにも感情が伝わるよう細かい部分までこだわった。

 彼女の魅力は、女優として感じさせる才能だけでなく、自らのおでこをさらけ出すそのスタイルにもある。さまざまな同世代の女優、アイドルらを取材してきたが、みな決まったように前髪をきっちりセットしており、大きくおでこを出した子はほぼ皆無。遠くから見ると誰が誰だか区別もしづらい。例えるなら、就職活動の合同説明会に参加する黒無地のリクルートスーツを着た就活生を見るような、そんな違和感さえ感じていた。トレンドだと言えばそれまでだが、その中でも「1度(おでこを)出してからは病みつきになってしまって」と話す彼女が非常に気になった。以前は「私にも前髪があった」と振り返るが、周囲の助言もあり、でこ出しスタイルへと変更。チャームポイントのひとつにもなりつつある。

 今回の舞台を含め、吉田の出演する舞台の演出を3度手掛けてきた岡村俊一氏は「かたくなな子に見えるでしょ? この物語ではそこが重要だった。同世代の女の子で言えば群を抜いている。しゃべってないのにわかるんだもん。しゃべってないのに何やってるか分かるというのは重要なこと」とその才能を語る。「頭も良いし、覚えも良いし、伸びると思います」。

 今春の大学進学を機に、本格的に女優活動をスタート。大学では英語を専攻し、週6の授業に通いながら舞台出演をこなす毎日だ。ここ数年は英語の3行日記を毎日続けており「第2外国語は中国語を選びました。それもすごく楽しいです」と学びへの意欲も絶えない。

 目標の女優には、同じく大学に進学しながら女優の道を歩んだナタリー・ポートマンを挙げた。10年公開の米映画「ブラック・スワン」の撮影のために過酷なバレエ特訓に励むなど、熱心に役作りする姿勢に心酔し「見習いたいと思います」と話す。

 今後については「また呼びたいと思ってもらえるような愛される女優さんになりたい。お芝居が好きなのでジャンルにはこだわっていません。英語もやっているので、世界を目指して、誰が見ても感動するようなお芝居ができる女優さんを目指していきたいです」。

 今回の舞台では、役柄上おでこは出していないが、今後もでこ出しスタイルは継続していくつもりだ。「おでこを出してると(自分が)さらけ出せる。今後も貫きたいと思います。『美佳子とおでこ』です。絶対光っちゃうんですよね」と無邪気に笑う。

 かたくなな「おでこ姫」としてその名をはせる日が来るのは、そう遠くないかもしれない。