80年代、日本のハードロック・ヘビーメタルシーンをけん引した豪華メンバーによるカバーバンド「OSAMU METAL 80's」(オサメタ)のライブを取材した。実はこの取材には、ラウドネスのドラマーだった故樋口宗孝さんによる“縁”があった。

オサメタはボーカルのNoBこと山田信夫(元メイクアップ)、シャラことギターの石原慎一郎(アースシェイカー)、ベース寺沢功一(元ブリザード)、キーボード河野陽吾(元メイクアップ)、ドラム藤井修(元ノーウェア)の5人組だ。

80年代といえば世間はバブル期だが、世界的な音楽シーンではアイアン・メイデンのメジャーデビューなどで「ニュー・ウエーブ・オブ・ヘビーメタル(NWOHM)」の動きが起こっていた。その動きを受け、日本でもラウドネスのデビューやBOW WOWがバンド名をVOW WOWに変更し、よりハード路線に踏み込むなどハードロックシーンを彩っていた。

オサメタはその中核を成していたアースシェイカーや美形バンドとして女性人気が高かったブリザード、樋口さんによって見いだされた圧倒的歌唱力を誇る山田信夫率いるメイクアップなど、当時を知る者にとって夢のようなメンバーの集結だ。余談ではあるが、メイクアップは人気アニメ「聖闘士星矢」の主題歌を担当。NoBはアニソンシンガーとして海外でも人気が高い。

実はオサメタはかなり前に1度、ライブを見ている。その後活動休止となっていたが、2年ほど前に再始動した。

活動再開を知ったのはFacebookだった。私は樋口さんと付き合いがあり、よくゴルフをご一緒させていただいた。Facebookに樋口さんとのゴルフの話をアップした際、河野氏から友達申請が来たのだ。今年になって、樋口さんに師事した藤井氏からも同様のアクションをいただいた。今年は樋口さんが亡くなってちょうど10年。「樋口さんからのメッセージ」と勝手に解釈し、取材させていただいた。まさに樋口さんがつなげた縁なのだ。

オサメタが80年代洋楽ロックのカバーにこだわるのは、リスペクトからだ。寺沢はいう。「カバーも突き詰めると奥が深い。誰もが知るフレーズはそのままで、実はオサメタ風にアレンジしている部分もあるんです」。シャラも「誰もが知っているからこそ難しいけど、そこに楽しさがある」。リーダー藤井の言葉が印象的だった。「僕ら自身も若かった時代だし、あのころの洋楽からはいろいろいろ影響を受けた。だから、その恩返しというか、みんなで集まって騒げたらいいなと思っています」。

今回取材して感じたのは「カバーでも立派なエンターテインメントになる」ということ。みんなが知る楽曲は共通話題で、そこに演奏者の個性を融合させることでエンターテインメントは作り上げられる。そう実感した。そして、そんな体験をさせてくれた樋口さんにあらためて感謝します。