12年前の「300」で引き締まった筋肉美を見せたジェラルド・バトラーも49歳になった。

シークレット・サービスの敏腕エージェントにふんする「エンド・オブ-」シリーズも15日公開の「エンド・オブ・ステイツ」で3作目。前2作の激闘で体を痛めた主人公のマイク(バトラー)は「引退」を考え、彼を信頼する大統領(モーガン・フリーマン)は長官への抜てきを考えている。バトラーの実年齢にピタリと重ね、体力の衰えを経験ではおぎなえきれなくなりつつある微妙な時期を実感させる。

そんなすきを突いて、利権に執着する軍需産業がハト派大統領の暗殺をたくらみ、マイクをその容疑者に仕立て上げようと画策する。

あり得ないような展開だが、そもそもそれこそが北朝鮮特殊部隊によるホワイトハウス占拠に始まったこのシリーズの持ち味だ。マイクの「犯行」を前提に捜査に乗り出すFBIの女性捜査官(ジェイダ・ピンケット=スミス)の思い込みは強すぎる気がするし、ニック・ノルティふんするマイクの父親は存在感がありすぎる。が、そんな行きすぎキャラもこのシリーズの魅力だ。

文字通りノンストップで進行し、予定調和に収まらない展開はいろんな意味で先を読ませない。

今作ではアクションはもちろん、家族を巡る人間くさい部分までバトラーはいい味を出している。シリーズを自ら製作し、ライバルひしめくこのジャンルでメガヒットを続けたその手腕にも感服させられる。

毎回変える監督のセレクトにセンスが光る。今回のメガホンはスタントマン出身のリック・ローマン・ウォー監督。「オーバードライブ」(13年)や「ブラッド・スローン」(17年)を撮った人で、米国暗部をギラッと描く手腕が今回もさえている。

前作「エンド・オブ・キングダム」(16年)では、国際的テロの題材に合わせるように、イラン難民でスウェーデンに住むババク・ナジャフィ監督をハリウッドデビューさせた。

そして第1作の「エンド・オブ・ホワイトハウス」(13年)では、デンゼル・ワシントンとのコンビでアクション映画に定評のあるアントワーン・フークア監督を手堅く使っている。

とっぴに見える題材も、個性的な監督たちの視点や職人技でぐっと現実に引き寄せられている。ずばりはまった監督の人選。いろんな意味で苦労を重ねたバトラーならではだと思う。

2歳の時に両親が離婚。幼少期にスコットランドとカナダを行き来した彼はグラスゴー大の法科を最優秀の成績で卒業し、弁護士としてエリザベス女王のマネジメントを扱う事務所に勤める。が、ストレスでアルコール依存症に。同僚の薦めで本来の志望だった俳優を志したが、「オペラ座の怪人」(04年)の成功まで、8年あまりの「無名生活」を経験している。

3年おきに公開されるこのシリーズを見るたびに、バトラーの屈折した経歴とその苦節を思い出す。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)