コカインを使用したとして、昨年3月に麻薬取締法違反で逮捕され、6月に懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けた「電気グルーヴ」のピエール瀧(52)が、芸能活動を再開することが先日、分かった。瀧は、竹中直人、山田孝之、斎藤工が3人共同で監督する映画「ゾッキ」に出演。今月下旬から撮影に参加するという。

 逮捕されてから1年足らず、有罪判決を受けてからは8か月しか経過していない状況での復帰に「早すぎる」との批判の声も多い。また薬物で逮捕された芸能人が早く復帰すると「やっぱり芸能界は甘い」と言われがちだ。だが個人的には、「芸能界は甘い」とはとても思えない。

「芸能界は甘い」と主張する人の意見としては、「一般社会なら、薬物で逮捕されたら会社をクビになって、なかなか復帰できないのに、芸能人はすぐに復帰するからおかしい」というものが多い。ただそもそも、一般のサラリーマンと芸能人を同じ土俵で比べること自体、ナンセンスだ。

 たとえば1990年代前半、バラエティー番組やCMに引っ張りダコで超売れっ子になったタレント・森脇健児は、90年代後半から一気に仕事がなくなった。最近は、TBSの「オールスター感謝祭」での恒例企画であるマラソンで注目され、ようやく復活しつつあるが、つい最近までテレビで見かけることはほとんどなかった。

 森脇は自らのタレント人生について「逮捕されたわけでも不倫したわけでもないのに、干された」と自虐的に語っているが、実際に芸能人は、いつ仕事のオファーが来なくなるか分からない綱渡りの生活を送っている。

 森脇に限らず、最近は「一発屋」と呼ばれる芸人も多い。一度ブレークしても「いつか消えるかもしれない」という恐怖と常に闘っている。

 一方、一般のサラリーマンといえば、確かに罪を犯したら仕事復帰は難しいかもしれないが、逆にいうと逮捕でもされない限り、クビになるようなことはめったにない。はっきり言ってしまえば、たいした仕事をしていなくても最低限のことをやっておけば、クビにならずに仕事を続けられるだろう。

 昨年世間を騒がせた闇営業騒動にしても、反社会的勢力の会合に出席したという倫理感は問われるかもしれないが、逮捕されたわけではない。またベッキーや矢口真里、最近では東出昌大、鈴木杏樹など、不倫した芸能人も仕事が激減するケースが目立つが、これも決して逮捕されたわけではない。本来なら「夫婦間の問題」で済む話だが、芸能人だと仕事に影響が出てしまうのだ。

 罪を犯さなくても、仕事がなくなってしまう危機と常に隣り合わせにあるのが芸能人。そう考えると「逮捕から復帰が早い」ということだけを見て、「芸能界は甘い」というのは、あまりにも短絡的ではないか?