音楽ライブの生配信は今後の主流となり得るのか? 3月、世界配信の無観客ライブを行ったロックバンド「DIR EN GREY(ディルアングレイ)」のリーダー・薫が本紙の取材に応じ、自身の経験から感じた配信ライブの可能性と問題点について語った。
新型コロナの影響により、日本のみならず世界規模でライブやコンサート、イベントが中止せざるを得ない状況に追い込まれている。
そんな中で新たな試みも始まった。無観客での音楽ライブ生配信だ。
「現場(ライブ)がなくなったファンにとっては、ものすごく貴重な機会と大好評です。特に世界にも活動の場を広げているアーティストにとっては、世界中のファンが参加する“全世界同時ライブ”となりました」(音楽関係者)
ユーチューブなどでは、ファンからの“投げ銭”も行われ、新時代のライブを予感させた。
ディルも3月28日に公式ユーチューブチャンネルで、緊急生配信ライブ「The World You Live In」を神奈川県の「KT Zepp Yokohama」から行った。日本だけでなくアジア、欧米、南米など世界中のファンが視聴し、大盛況で幕を閉じた。
ディルのリーダー・薫は生配信ライブを行った経緯について「今の時代だからこそできることなのかなと思い、挑戦してみました」と明かす。
無観客の会場で演奏することには「100%の力は出せましたが、逆に言うと『100%しか出せない』という気持ちもありました。『準備したものをそこに置いてきた』という感じ。やっぱりライブはみんなとつくり上げるものと感じましたね。もちろん“ライブを見てくれているファンがいる”という気持ちはありましたけど」と振り返った。
“ライブは生き物”と言われるように、ファンの熱気もステージづくりには欠かせないことを改めて実感したという。
新型コロナの終息には、海外では少なくとも2022年までかかるとの研究結果も出ている。今年中に通常のライブが再開できるかどうかの見通しは全く立っていない。
配信ライブの今後の可能性について薫は「う~ん…簡単ではないでしょうね」とこう話す。
「映像が撮り手の感覚になるので、MV(ミュージックビデオ)を見ているような感じになるんじゃないかな、というのもありますし。やり方はあるとは思いますが…」
予算の問題もある。1つのライブをつくり上げるには、メンバーだけでなく、様々なスタッフがかかわっている。また会場費の問題もある。
「例えば、この予算でやってくださいと決められているのなら、できるのかもしれない。会場ももっとコンパクトにするとか。今回(Zepp Yokohama)はもともとツアーを行う予定だったので」と薫。
通常ならチケットの売り上げで計算できる収益が、配信ではそうもいかない。アーティストたちも試行錯誤でライブ再開の道を探っている。