金メダルコンプリートの可能性は――。女子マラソンが盛んな東海3県(愛知、岐阜、三重)の関係者の間で、1年延期となった東京五輪の女子マラソン代表・鈴木亜由子(28=日本郵政グループ)への期待が高まっているという。岐阜県出身の高橋尚子氏(48)がシドニー五輪で、三重県出身の野口みずき氏(42)はアテネ五輪で金メダルを獲得。愛知県出身の鈴木は偉大な先輩たちに続くことができるのか。野口氏が占った。

 日本の女子マラソンで五輪金メダルに輝いた高橋氏、野口氏はともに東海3県の出身。来夏の東京五輪には愛知県出身の鈴木が出場することから、地元では「亜由子選手が金メダルを取れば、東海3県で金メダルコンプリートになる」との声が聞かれる。

 野口氏は鈴木について「やっぱり頭がいい子。レースを組み立てる頭もあるので、すごく冷静に判断ができる」と評価する。実際に、2度目のマラソン挑戦となった昨年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では、優勝した前田穂南(24=天満屋)を無理に追いかけず、自分の走りで五輪出場圏内の2位を死守。場面に応じて柔軟な対応を見せるのが大きな魅力の一つだ。

 しかし、最大の課題とされるのがケガの多さだ。1月下旬の米国合宿中には、右太もも裏を肉離れ。5月末ごろから走り始めたが、別の箇所に違和感が生じるなどして、現在も長い距離を走る練習ができていないという。7日のオンライン会見では「正直、もし今日が本番ならベストな状態で立てたか疑問なところもある」と本音を吐露した。野口氏も「故障しがちなのは心配。肉離れとかちょこちょこあるので」と指摘する。

 ただ、東京五輪が1年延期になったことで、体を一からつくり直す時間が生まれた。野口氏は「余裕を持って準備期間に課題なども立て直せると思うし、ポジティブに捉えていい」。潜在能力は抜群で、トラックでも実績を残してきたことから「スピードはあるので、練習さえ積めればと思う。スピードを生かせるように、もうちょっとだけ距離を走ってスタミナをつけると面白い」と声を大にする。

 新型コロナウイルスの感染再拡大で1年後の開催は不透明なままだが、鈴木はかねて五輪に向け“超える”をテーマにしてきた。「どんな状況であれ、1年後に今の自分を超えれたらっていう思いで立っていたい」との決意にブレはない。