倒す気持ちを忘れたKOアーティストは、再び頂点に立てるのか。元WBC世界フライ級王者でWBCバンタム級8位の比嘉大吾(25=Ambition)は東京・後楽園ホールで同級日本13位・堤聖也(24=角海老宝石)とのノンタイトル10回戦(26日)に臨み、引き分けた。

 比嘉は「勝ってたと思ったので判定までいってしまった。セコンドが『行け』と言ったところで行けなかった」と反省の弁。フライ級で日本記録タイの15連続KOを積み重ねていた当時は「ガムシャラに倒していた」と採点を気にしなかったが「攻める姿勢がなくて(相手を)見ている時間が長かった」と、自身の変化を説明した。

 3月に白井・具志堅ジムと契約を更新せず、現在のジムに移籍。野木丈司トレーナー(60)は「本当の姿が見えるのには2~3試合かかると思う。結果に落胆はしていない」とコメントしたものの、“失敗”が許されない新天地での初試合で持ち味を出せなかった。

 2018年4月のWBCフライ級V3戦で前日計量に失格し、ライセンス無期限停止処分を受けて約1年10か月のブランクを経て今年2月に試合を実施。その後、新型コロナウイルスの影響などで約8か月の空白期間があったとはいえ、倒す気持ちを取り戻せなければ、バンタム級の頂点に君臨するWBAスーパー&IBF世界統一王者、井上尚弥(27=大橋)の背中は遠くなるばかりだ。