井筒和幸監督(67)の約8年ぶりとなる新作映画「無頼」が12日から全国で公開される。戦後昭和の時代を這い上がろうと必死で生き抜いたアウトローを描いており、主演はEXILEの松本利夫(45)、姐さん役は柳ゆり菜(26)が務めている。本紙は公開を前に井筒監督を独占インタビュー。映画のことから、井筒作品で大ブレークしたあのお騒がせ女優のことまで聞いた。

 ――約8年ぶりの作品では、戦後の貧しい時代を這い上がったヤクザが描かれている

 井筒監督 前からずっと思ってたんですよ。ヤクザ映画というものをどういう形でもいいから作れないかなと。少年や青年の不良、あぶれもん、コメディーヤクザ(映画)しか作ってきてないからさ。「黄金を抱いて翔べ」(2012年)の直後かな。最初は沖縄のギャング抗争を面白いかなと思ってね。

 ――当時、大手ネット配信会社と組んで製作という話もあったとか

 井筒監督 そこが乗りかけていたけど、ポシャっちゃった。それで余計に気持ちが積もっちゃった。そうしたら先輩ジャーナリストさんたちが、僕ら昭和のヤクザ史のノートがあるから、こういうのをやったらどうだと。それが元です。そうしたら8年たっていた。
 ――映画のテーマは

 井筒監督 昭和の時代の欲望の資本主義をどう這い上がっていったか。最底辺、下層から這い上がる、そういう話です。(主人公は)貧しいところからスタートして、その中でもはじかれて周辺に追いやられたというか、頼るものもない、寄る辺ないところですよね。

 ――昭和という時代をどうとらえている

 井筒監督 昭和というのは欲望に生きた時代だからね、欲望の限りをみんな追求したんだよ。いま若い子は欲望がないんだよ。欲というものが本当にそぎ落とされた。そして自由もないでしょ。周りを見て、気にして気にして生きている。

 ――主演にEXILEの松本を起用した理由は

 井筒監督「黄金――」が終わって次の年か。そのころにEXILEのところのプロデューサーから「うちにこんな役者もいるんですよ」と紹介された。写真ですよ。それを覚えていたの。シナリオができあがった時くらいにフッと思い出したんだよ。ちょうどいいんじゃないのと。やさぐれた顔してるから、昭和の顔してるね、と。

 ――演技はどうだった

 井筒監督(映画の出演者は)オーディション組がほとんどでしょ。4000人くらい来ているんだもん。(合格は)304名ですよね。その人たちを「あーせい、こーせい」言うのに必死だったから、松っちゃんにかまってる場合じゃないよ。リハーサルを2か月間くらいしてはって、リアルにやってくれたから、とやかく言ったわけじゃない。「パッチギ!」のころみたいに怒鳴りまくってたわけじゃないよ。

 ――「パッチギ!」といえば、ヒロインの沢尻エリカも怒鳴った?

 井筒監督 エリカちゃんは女神さんですよ。怒鳴ったことないですよ。あの時(昨年の逮捕)はテレビでは怒鳴ってやったけど(笑い)。叱咤しただけです。

 ――またいつか一緒に仕事したい?

 井筒監督 いつか一緒にしたいね。もう1回やる気があるならやればいいだけでね、ゆっくり考えたらいい。人生長いんだから。たっぷりあるんだから、見つめなさいと。才能はありますよ。リアルな気持ちの演技がうまいよね。この姐さんの演技やった子(柳)もうまいよ。オーディション組で残ったんですよね。みんなが「いいと思いますよ」と推薦するから、よしやろうと。怒鳴る必要がなかった。