今から15年前、一人の天才少女が衝撃のシニアデビューを飾った。現在プロフィギュアスケーターとして活躍する元世界女王の浅田真央(30)は2005年12月17日、初出場したグランプリ(GP)ファイナルで世界の頂点に立った。笑顔で銀盤を躍動する15歳にファンは熱狂し、今も「真央ちゃん」は愛され続ける。そんな国民的ヒロインが本紙独占インタビューに応じ「原点」となる大会を振り返った。当時の輝きを本人はどう感じているのか――。

 ――日本を震撼させたGPファイナルだった

 真央 すごくよく覚えていますね。とても大きな会場(東京・国立代々木第一体育館)にたくさんのお客様がいて、声援も大きい。すごく注目されているんだなって感じました。昔から憧れていた選手やテレビでずっと見ていた選手と一緒に試合に出られ、ただただ楽しみでワクワクしていました。緊張よりも楽しみの方が大きく、先生(山田満知子コーチ)とも普通に笑って話していました。

 ――今の年齢のちょうど半分だ

 真央 そうですね~。本当に不思議、あっという間です。あのときの自分は、何も知らない強みがありました。怖さって何? プレッシャーって何? みたいに完全に無敵でしたね(笑い)。あれからいろんなことを経験し、試合の怖さも知りましたが、このときはホントに元気でパワーもありました。それに、この大会がどんなものか全く分かっていなくて。GPシリーズの上位の人がファイナルに行くってことすら分かっていませんでした。

 ――本当に楽しそうに演技していた

 真央 滑っているっていうより、跳んでいる感じでしたね。滑りも幼いですし、重みのあるスケートではなかったですけど、15歳らしい滑りだったなあ…と感じますね。実はショートプログラム(SP)のオレンジの衣装はもともと姉(浅田舞)が使う予定だったもの。試合前に着て、似合っていたから先生が「これでいいんじゃない」って言って、急きょ使うことにしたんです。

 ――トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)にも注目が集まった

 真央 フリーで2回跳ぶかどうかっていう状況でした。自分の中ではできる気持ちでしたが、まだ確率が良くなかったし、とりあえず勝ちたかったので「手堅く1回でいこう」って先生と話したのを覚えています。

 ――当時の映像を見返すことはあるか

 真央 全く見ないですねー。あまり振り返ることもないですし、見たいとも思わない。私、このときのメダルがどこにあるかすら分からないです(笑い)。

 ――年齢を重ねるにつれて失われたものは

 真央 そうですね。うーん、このときの自分にあって、なくなったもの…。やっぱり「自信」ですかね。負けることや怖さを知ってしまい、それからはどんどん自信がなくなっていったかもしれません。15歳のときは自信満々。あのころが一番勢いがあったと思います。

 ――いつかGPファイナルで見せた「くるみ割り人形」の演目を同じ衣装で再現してほしい

 真央 さすがにちょっと…クララは10代なので(笑い)。ショー(現在公演するサンクスツアー)の演目を何にするかって考えたとき、候補には入りませんでしたね。当時の衣装は(体に)通るとは思いますが、やる勇気がないです。ちょっと目をつぶりたくなると思うので(笑い)。

 ――2006年トリノ五輪は年齢制限(※開催前年の6月30日までに15歳)で出場できなかった。出たかったか

 真央 それは全くありませんでした。ルールで出られないものだと思っていたので、私は小学生のころから(10年)バンクーバー五輪に出るつもりでした。たまたまGPファイナルで優勝できて、皆さんに「出られたらいいのに」って言ってくださったのは覚えていますが、私の中でルールはルール。変わることはないので、こだわりはなかったです。

 ――もしあのときの勢いで出ていたら

 真央 次の(バンクーバー)五輪までやっていたかどうか分からないですね。フィギュアスケーターは五輪でメダル取ってすぐやめちゃう人も多いので。もし、トリノ五輪に出ていたら、たぶん(14年)ソチ五輪までやっていなかったと思います。

 ――現在、夢を抱いている15歳の人たちにメッセージを

 真央 恐れずにチャレンジしてほしいです。若いときって怖さを知らない分、できてしまうことがあります。そこから学ぶことってたくさんあるので、今しかできないチャレンジをし続けることは大切だと思いますね。私もこれからの人生、スケートと別の形であってもチャレンジはしていきたいと思っています。

☆あさだ・まお 1990年9月25日生まれ。愛知・名古屋市出身。5歳で姉の舞と一緒にフィギュアスケートを始めた。小6で特例出場した2002年の全日本選手権で女子史上初の3連続3回転ジャンプを決める。シニアデビューした2005年のGPシリーズ中国杯で2位となり、出場したGPファイナルでは女王イリーナ・スルツカヤ(ロシア)を破って初優勝。10年バンクーバー五輪銀メダル、14年ソチ五輪6位。世界選手権優勝3回、GPファイナル優勝4回、全日本選手権優勝6回。17年4月に引退した。163センチ。

〈今後のスケジュール〉2017年4月に引退した真央は、2年前に自身がプロデュースしたアイスショー「浅田真央サンクスツアー」で全国を巡ってきた。自ら主役を務め、現役さながらの華麗なスケーティングでファンを魅了している。今年は新型コロナウイルス禍で3月から一時中断。8月から再開し、現在も全国行脚中だ。

【熊本公演】12月19~20日、アクアドームくまもと ※今年3月28~29日の振り替え公演

【大阪公演】2021年1月10~11日、大阪・東和薬品ラクタブドーム