ジェーン・フォンダ(82)とキャンディス・バーゲン(74)は、中学生の頃に愛読した「スクリーン」や「ロードショー」でそれぞれに毛色の違う知的美女としてグラビアページの常連だった。

やや間を置いて登場したダイアン・キートン(74)はウディ・アレン監督の「アニー・ホール」をきっかけにファッション・リーダー的な存在となる。

メアリー・スティーンバージェン(67)の存在を知ったのは90年以降だが、「ギルバート・グレイブ」や「アイ・アム・サム」の好演で忘れられない顔である。

そんな存在感たっぷりの4人が初共演したのが「また、あなたとブッククラブで」(12月18日公開)だ。

4人の女友達は、順繰りに「課題図書」を決め、1冊の本をさかなにワインを飲む女子会を定期的に開いている。

40年連れ添った夫を亡くしたばかりのダイアン(キートン)は娘たちの過干渉を内心うるさく思っている。

ホテルオーナーのビビアン(フォンダ)はいまだに複数の男たちと感情抜きの関係を続けているが心は満たされない。

連邦判事としてキャリアの頂点にいるシャロン(バーゲン)は何十年も前に別れた夫への未練が断ち切れない。

ただ1人夫のいるキャロル(スティーンバージェン)は35年連れ添った夫から最近疎外されていると感じている。

ある日の読書会で、ビビアンが遊び心から課題本に官能小説の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を選んだことをきっかけに悶々(もんもん)と日常生活を送っていた4人の心に火が付く。忘れて久しい濃厚なセックス描写。タイミング良く(悪く)それぞれに相手とデートのチャンスが訪れて…。

出演に当たり、フォンダが、かつての「反戦の闘士」らしい鋭いコメントを寄せている。

「私たちの文化は、ある時点でセックスをやめることを前提にしています。だから年老いたと思っていた親たちが、性的にアクティブであり続けていることを知った時に子どもたちはショックを受けるのです。この映画ではダイアンと娘たちの間にそんな関係がよく描かれています」

適度なタイミングで挿入される4人の読書会をいい感じのアクセントに、4者4様の恋模様が展開する。生活感のあるていねいな演出で、年配者ではなくても必ずどこかに「あるある感」を覚えるはずだ。

いい年の重ね方とは彼女たちのことだと思うが、感情の高まりを演じる瞬間にはそれぞれにハッとするほど美しい。何度となく映画誌のグラビアや往年の作品を思い出した。

相手役もクレイグ・T・ネルソン、アンディ・ガルシア、ドン・ジョンソン、リチャード・ドレイファスと個性派がそろっている。ロバート・レッドフォードのもとでプロデューサー、脚本家としてキャリアを重ねてきたビル・ホルダーマン監督(43)にとっては初メガホン。大物個性派をまとめ上げる手際でさっそく力を見せている。

監督は「社会やハリウッドには年齢による差別がはびこっています。社会の認識なんて気にする必要ありません。克服すべき唯一の障害は臆してしまう自分の考えだけなんです」と語っている。

登場人物たちと同様に年下の監督から思いっきり元気をもらえた気がする。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)