放送作家高田文夫氏(72)が企画した舞台「『よみがえる明治座東京喜劇』-ニッポン放送『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』全力応援!!-」が29日、東京・日本橋浜町の明治座で開演した。

第1部は芝居「こちとら大奥様だぜぃ!」。第2部は日替わりゲストが出演する「ラジオビバリー昼ズ寄席」となる。

芝居「こちとら大奥様だぜぃ!」は、明治座での芝居をこよなく愛した故三木のり平さんを敬愛する高田氏が、東京の喜劇のあかりを守るために脚本、演出、出演の3役をこなす宅間孝行(50)に1年前に相談したことから実現。東京の喜劇人を代表する萩本欽一(79)の弟子の女優田中美佐子(61)に白羽の矢を立てた。田中が演じるのは、幕末の庄毛内(しょうもない)藩の奥方さま。その夫のバカ殿様を、同じく萩本によってバラエティーでも人気者になった歌手前川清(72)。奥女中を昨年3月に亡くなった志村けんさん(享年70)の舞台「志村魂」のレギュラーだった磯山さやか(37)。他に萩本の弟子の東貴博(51)らが出演する。

田中は、まるで「コント55号」全盛期の萩本ばりのキレキレの動きを見せ、顔芸まで披露。磯山との2人で、まるで萩本と志村さんが共演してるかのようなシーンも再現した。

終演後に宅間と会見した高田氏は、田中の演技に「文句なし、いつかやってもらおうと思っていて、宅間君とも相談して白羽の矢を立てました。アドリブも自然にやっていて、ポスト泉ピン子、いや森光子になれる」と激賞した。そして「あれだけのキレキレの動きができるのは、あと数年だから早く見ておいて」と話した。

宅間は「一昨年に僕のカンパニーの芝居に出てくれた。本番に入るとサービス精神を発揮してしまう。僕らは計算していたけど、お客さんはびっくりしたのでは。元トレンディー女優のカケラはみじんもありません。あそこまで激しやられると、(ボケを)拾っていく方も大変なんです」と笑った。

1年前から企画して、今月4日から稽古入り。その直後の8日に緊急事態宣言下となった。高田氏は「1年前から宅間君とやっていて、コロナが再拡大したけど初日を迎えられて感激です。72歳、ガースー(菅義偉首相)と同い年なんですが、お客様を見ると、この商売をやっていてよかったと思いました。不要不急の商売じゃないんだと、俺らしくなく感動しちゃいました」。

コロナ禍で仕事がなくなり、車を手放したという宅間は「稽古が始まって、すぐに緊急事態宣言が出た。止める決断もあったけど、万全の体制をとって稽古を始めました。一つ間違えばクラスターになりますから。初日を迎えて、あらためてこの職業はお客さんがいて成り立っていると思いました。これを乗り越えて『緊急事態宣言の中で芝居をやったんだ』と振り蹴ることができるよう、緊張感を持って2月14日までやっていきます」と話した。

東京喜劇を盛り上げる舞台に、高田氏は「美佐子さんも、前川さんも萩本さんとやっているし、東も萩本さんの弟子で、お父さんは東八郎さん。磯山には志村さんの魂がある。宅間くんはずっと頑張ってきたし、全体を見る俺は(ビート)たけしイズムがある」。

この日の第2部の「ラジオビバリー昼ズ寄席」には、当代きっての売れっ子のサンドウィッチマンとナイツが出演した。高田氏は「寄席の顔付けは僕が『出てよ』と声をかけたから席亭よりも豪華。唯一、(立川)談春だけが出てない」と笑った。

宅間は「美佐子さんも前川さんも、客前に出るとスイッチが入って本番でグーッと変わる。お客さんの声や笑いでエンジンのかかり具合が違う。だけど美佐子さんは、言った通りにやってくれないので困ります(笑い)」。高田氏は「お芝居は毎日転がって、変わっていくのが楽しいね。こういう事態ですが、ホッとする、笑う時間があるといい。来月14日までやってるので、ぜひ浜町へ足を運んでください。戦時中だって寄席はギリギリまでやってたんだから、やっぱり笑いは必要なんです」。宅間は「大笑いしていただければ免疫力もアップ。ぜひ楽しんでもらえたら」と話した。