昨年2月に84歳でこの世を去った不世出の名将・野村克也さんの命日にあたる11日、キャンプ地の沖縄・宜野座で教え子でもある阪神・矢野燿大監督が恩師への思いを語った。

 矢野監督が就任以来ナインに説いてきた教えの一つが「苦しい時こそ楽しむ」ことの重要性。この哲学も野村さんからの影響が大きかったそうで「野村さんの自宅に行った時、頂いた色紙を監督室に置いてある。『野球に学び、野球を楽しめ』と書いてあるんだけど、野村監督と一緒に野球をやって楽しいと思ったことは、あんまりなかった。そういうことを(野村さんも)口にしてなかったしね。だけど色紙にそう書いてくださったのが俺にはうれしかった。俺も、俺が思う『楽しむ』をやっていきたい」(矢野監督)。

「考えて野球をする」ことの大切さも、名将に叩き込まれた。「うまいやつが勝つんじゃない。高津(現ヤクルト監督)もそうだけど、あれだけ遅い球を武器にするってのはね。アンダースローからのシンカーからは切れを感じた。考えて野球をすることの大切さはみんな野村監督の下で学んだ。ただ『来た球を打つ』だけでは限界があるからね」。

 この日予定されていた日本ハムとの練習試合(名護)は悪天候のため中止に。グラウンドに掲げられた半旗が涙雨に濡れる中、恩師への思いはとめどなくあふれさせていた。