竹野内豊(50)が13日、都内で行われたWOWOW連続ドラマW「さまよう刃」(15日スタート、土曜午後10時)完成報告会で“進化”を強調した。原作は04年の東野圭吾氏の小説で、09年に映画化された際、竹野内は娘が惨殺され、復讐(ふくしゅう)に突き進む主人公を追う刑事を演じた。12年の時を経たドラマ版で、竹野内は主人公を演じ、作品自体も地上波では出来ない表現に挑戦。竹野内は「日本のテレビドラマの常識、概念を覆してしまう衝撃的な作品」と訴えた。

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竹野内は視線を真っすぐ前に向け、力強く言った。

「今、日本の民放テレビドラマの制作は、さまざまな規制がある中で作らなくてはいけない。難しいボーダーラインはある。でも、今までの常識、概念を覆してしまうんじゃないかと」

フジテレビ系で放送中の「イチケイのカラス」(月曜午後9時)では、扱う事件に疑問が湧けば職権を発動し、現場検証で真相を明らかにする刑事裁判官をコミカルに演じ、平均視聴率12%超と好調。高評価を得ている中、別な魅力がある作品だと強調した。その言葉を、片山慎三監督(40)がより踏み込んで語った。

「地上波で映像化しようとしても表現の規制がある。血やレイプシーンの表現は(有料放送)WOWOWだからできた。ドラマというより長い尺の映画を作っている感覚で撮影した」

片山監督は「パラサイト 半地下の家族」で米アカデミー賞作品賞、監督賞などを受賞した韓国のポン・ジュノ監督の助監督を務め、同監督が絶賛した19年の初長編監督映画「岬の兄妹」で注目された。その片山監督が日本、韓国で映画化された「さまよう刃」を、映画より長い尺で、登場人物1人1人を深掘りして描いた。

コロナ禍で昨年春から夏に撮影がずれた中、台本を読み込み、かつて役として追いかけた主人公の役を作る中「もしも自分自身に起こったら、同じような感情になるんじゃないか」と考えた。普段は役を引きずらないが、撮影中「かなり重いシーンを撮ったら、2日くらいヘビーな気持ちが抜けなくて、私生活でも苦しんだ」と振り返った。それでも、かつて自身が演じた役を演じた三浦貴大(35)を「心の揺れ動き、繊細な部分を三浦さんが体現した」とたたえる余裕を見せた。「むごい場面を見せたいがために作ったわけじゃない。何かを心に訴える素晴らしい作品」。竹野内の声にひときわ力がこもった。【村上幸将】

◆「さまよう刃」 2004年(平16)の東野圭吾氏の小説が原作。長峰重樹(竹野内)は妻を亡くした後、男手一つで育てた1人娘絵摩(河合優実)が惨殺され、悲しみに暮れる。犯人の居場所を告げる密告電話に従い、行ったアパートには娘が少年たちに薬物を打たれ、レイプされ惨殺された様子を撮った映像が残されていた。長峰は帰宅した犯人の1人を殺害。主犯を追う長峰は是か非か、世論は二分される。竹野内はドラマW初出演で初主演。