落語を愛するファンたちの熱い心意気が、落語家、寄席を勇気づけています。コロナ禍で休業や入場者制限などで大打撃を受けている都内の寄席を支援しようと、落語協会(柳亭市馬会長)と落語芸術協会(春風亭昇太会長)がクラウドファンディング「寄席支援プロジェクト」を5月18日に立ち上げたところ、21日までのわずか4日間で目標の5000万円を達成しました。

22日午前の段階で5300万円を超えるほどで、目標金額を3000万円増額した8000万円に修正し、クラウドファンディングは当初の予定通り6月30日まで続けるそうです。

支援を受ける寄席は鈴本演芸場、新宿末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、上野広小路亭で、各寄席は前年度(19年度)の売り上げから平均して70%の減収となり、毎月200万円から300万円の赤字となっています。

緊急事態宣言による休業などで国から受けている支援は、昨年の緊急事態宣言時には2カ月休業して計100万円、今年1月の2度目の緊急事態宣言時は営業時間制限だけのため補償はなく、今回の緊急事態宣言では5月1日から11日まで休業したものの、補償はありませんでした。

そのため、今後も経営を維持できるかギリギリの状態で、鈴本演芸場では正社員10人を解雇した上でバイトとして再雇用するなど、まさに存亡の危機を迎えています。

支援は3000円から1000万円までの9コースがあり、金額によって御礼メール、限定の手ぬぐい、千社札、御礼色紙をはじめ、30万円では市馬と昇太の両会長の直筆サイン色紙。100万円では両会長の直筆御礼状(額装付き)と落語協会製作の反物(非売品)が贈られます。支援の7割は1万円以下ですが、100万円コースには3人も申し込みがありました。

関係者によると、当初、目標金額を5000万円とした時は「こんなに集まるのかな」と不安の声が多かったそうで、4日間でのスピード達成は「驚きの速さ」と予想外だったようです。そして、金額はもちろんですが、22日午前時点で3800人を超える人が寄席の灯を守りたいと支援に手を挙げ、都内だけでなく、全国や米国やフランスなど海外にもその輪が広がっています。

市馬、昇太両会長も「応援コメントで温かい応援のお言葉や思い出の数々を寄せていただき、大きな活力をいただいています」と感謝しています。

4月25日の緊急事態宣言発令時に東京都から「無観客」での開催を要請され、寄席側は例外規定である「社会生活に維持に必要なもの」に該当するとして、興行を続けた経緯(その後、国の強い要請で5月1日から休業)があるけれど、身銭をきった支援の多さは、寄席が社会生活に不可欠なものであることを改めて実証している。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)