草なぎ剛(46)の主演舞台「家族のはなし」が、KAAT神奈川芸術劇場で上演(30日まで)されている。

初演は19年5月の京都劇場。草なぎが犬を演じ、コミカルな中に温かみのある演技が話題となった「わからない言葉」と、草なぎと小西真奈美(42)が夫婦役を演じ、切なくも優しい余韻が残る「笑って忘れて」の2本立ての構成だ。

「わからない言葉」では、小西と羽場裕一(60)がコミカルな芝居を見せ、草なぎはその夫妻の愛犬のハッピーを演じる。もちろん、犬は人間の言葉をしゃべらないし、人間が話す言葉の意味もすべてがわかるわけではない。人間と犬とのコミュニケーションの齟齬(そご)を、演出方法や人間が話す“犬語”で客席を笑わせてくれる。

そんな設定だけに、アドリブも多く、公開舞台稽古では、草なぎは「ここ脚本に書いてないんですよ。フリートークってだけで。本番は大丈夫かな」などと笑わせるシーンも。小西と羽場はいわゆる犬語で話すせりふが膨大にあるが、もちろん、かなりがアドリブ。上演回数が増えるに従って、この犬語も洗練されていくような気がする。

「笑って忘れて」は草なぎと小西が夫婦役。笑うと記憶を無くしてしまう記憶障害の妻を、とても明るく見守る夫の話だ。笑顔がすてきな妻だが、笑うと記憶がなくなってしまうために、妻を笑顔にできない夫を草なぎが好演。夫婦の幸せって、もしかしたらって、そっと客席に教えてくれる、センチメンタルなお芝居だ。

2話ともハートウオーミングなストーリーなのだが、その朗らかさを観客に伝えてくれるのは、出演者のしっかりとした芝居の裏付けがあるから。せりふの巧みさや間合い、表情などなど、チームワークのよさも抜群だ。

そして、畠中洋、小林きな子が演じる登場人物もキャラが立っている。

今作は、昨年4~5月に東京公演が予定されていたが、コロナ禍の影響でやむなく公演中止となっていた。【竹村章】