新型コロナウイルス感染拡大の影響による長期の外出自粛やリモートワークによるストレス、ステイホームによる孤立や感染への不安などでメンタルヘルスの変調をきたす人が増え、アメリカでも社会問題になっています。

そんな中、21日からApple TVで人気司会者オプラ・ウィンフリーとヘンリー王子がタッグを組んだ、メンタルヘルスに関するドキュメンタリー番組「The Me You Can't See(あなたに見えない、私のこと)」の配信がスタートしました。ヘンリー王子自身も、番組で母ダイアナ元妃を1997年に交通事故で亡くしことで心に傷を負ったことを告白しており、それが原因でアルコールや薬物を使用するようになり、パニック障害を患ったことなども赤裸々に語っています。

また、ゲスト出演したポッドキャストの番組でも、メディアに注目される生活が原因で精神が崩壊しかけてセラピーを受けたことも明かしており、メンタルヘルスの問題が今、改めて世間の注目を集めています。

番組ではレディー・ガガも自身の壮絶な過去の体験からくるトラウマを告白していますが、ハリウッドでは近年、メンタルヘルスについて声を上げるセレブが増えています。啓蒙のため、同じような苦しみを抱える人たちに向けて自らの経験を語っているセレブたちを紹介します。

ヘンリー王子とメーガン妃(19年6月撮影)
ヘンリー王子とメーガン妃(19年6月撮影)

◆ヘンリー王子

12歳という多感な時期に不慮の事故で母親を亡くしたヘンリー王子は、ウィンフリーとのインタビューで、考えることをやめて感情を麻痺させるために飲酒や薬物を使用していたと告白。「平日は飲まなくても、土曜日には1週間分の酒を一気に飲むこともあった。それは楽しいからではなく、何かを覆い隠すためだった」と話し、28歳から32歳くらいまでは人生の中で悪夢のような毎日だったと明かしています。

また、メディアから注目を集める日々は、動物園と映画「トゥルーマン・ショー」(何も知らずに24時間生活のすべてがリアリティー番組として撮影されている主人公が真実を突き止めようとする物語)を足したようなものだったとも語り、公務に出かける際には緊張で汗が噴き出て心臓の鼓動が早くなるなどパニック発作を起こしていたことも告白しています。

妻のメーガン妃も慣れない王室での生活やメディアでのバッシング、長男アーチー君を身ごもっていた時に、生まれてくる子供の肌の色を気にする発言を王室メンバーから受けたことなどから自殺を考えるようになったと語っており、賛否両論あるものの、身動きの取れない王室での生活からくる夫妻のメンタルヘルスが原因で、離脱という道を選択せざるを得なかったと明かしています。

◆レディー・ガガ

19歳の時に受けた性的暴行が原因で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患ったことを明かしているガガは、番組のインタビューで音楽プロデューサーから「服を脱げ」と繰り返し求められて、従わなければ音楽を焼き捨てると脅迫され、「ただ凍りついた」と抵抗できなかった恐怖を告白。さらにスタジオに監禁され、妊娠して具合が悪くなると実家の前に置き去りにされたことも明かし、その体験から長期に渡って体調不良に陥って通院を余儀なくされたと告白しています。

「最初は体に酷い痛みを感じたけど、その後は何も感じなくなった」と心の傷の深さを明かしたガガは、過去にも「死んでいるような気分だった。戦う気力もなく、自分のためにもう1度立ち上がる気分にもなれなかった」と話していたことがあります。そんなガガは、2017年に全身に強い痛みが出る線維筋痛症を患っていることを告白していますが、この時のトラウマが原因だった可能性を示唆しています。

レディー・ガガ(2016年11月2日撮影)
レディー・ガガ(2016年11月2日撮影)

◆セレーナ・ゴメス

セレーナ・ゴメスはコロナ禍の昨年、18年に精神のバランスを崩して「双極性障害」と診断されたことを告白しています。「たくさんの情報を知れば知るほど、大きな助けとなります。知っていれば、もう怖くはない」と語り、診断されて適切な治療を受けたことで気持ちが楽になったと明かしています。また、誰かに助けを求めることは大切だとも語っており、自らがメンタルヘルス問題を抱えていることをオープンに語ることで、多くの人にこの問題を知ってもらいたいという願いもあるようです。そんなゴメスは昨年7月に28歳の誕生日を記念してメンタルヘルス上の問題を抱える人たちを支援するための基金も設立しています。

◆ジャスティン・ビーバー

17年夏に「自分を取り戻すため」音楽活動を休止することを発表したジャスティン・ビーバーは、うつ病を患い治療を受けていたことが伝えられています。その翌年には結婚したことで良き夫になろうとセラピーにも通ったといいますが、精神の落ち込みが激しいビーバーを妻ヘイリーが影で支え、音楽活動への復帰も果たしています。

そんなビーバーは昨年、YouTubeのドキュメンタリー番組で過去の精神的な苦悩について語り、自殺願望を抱いていたことも赤裸々に告白。痛みが長く続き、その苦しみにただ耐え続ける中で、「こんな痛みを感じるなら、何も感じない方がましだ」と何度も自殺を考えたと明かし、その上で自分と同じような苦しみを抱く人たちに「もし孤独を感じているなら、それを口に出して。そうすれば自由になれる」とメッセージを送っています。

◆デミ・ロヴァート

18年に薬物の過剰摂取で救急搬送されて、3度の脳卒中と心臓発作を起こすかなり深刻な状態に陥ったデミ・ロヴァートは、過去にも心の病から摂食障害や自傷に苦しんでいたことを明かしています。退院後はリハビリ施設に入所して依存症の治療を受け、歌手として復帰も果たしましたが、コロナ禍の昨年はABCテレビの番組で「精神的な不調が原因で過ちを犯してしまうことは自然なことだと思う。(自身の過去の行為に)後ろめたさはない」とコメント。自らの問題について語り、認識を高めることで「メンタルヘルスに関する偏見や差別をなくせたら」と話し、「あなたのことを愛し、心配してくれている人たちがいます。彼らに助けを求めて電話をすれば答えてくれます。もし、答えてくれない時は、私の音楽を聴いて。私はあなたのそばにいるから」と同じように苦しみを抱える人たちにメッセージを送っています。【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)