「アングラの女王」の異名で舞台などで活躍し、TBS系ドラマ「3年B組金八先生」の教頭役でも存在感を見せた女優李麗仙(り・れいせん)さん(本名大鶴初子=おおつる・はつこ)が、6月22日に肺炎のため都内の病院で亡くなった。79歳。葬儀・告別式は家族と近親者で行う。元夫は劇作家の唐十郎(81)。関係者によると、最期は実の息子で俳優の大鶴義丹(53)に看取られた。

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母の李さんをみとった義丹は、所属事務所を通じコメントを発表。「母、李麗仙は、2018年に脳梗塞を患いリハビリに励んでいましたが、今年の春に肺炎となったことから入院生活となり、今月22日に永眠しました」と、闘病中だった近況を報告した。

東京生まれの李さんは舞台芸術学院在学中に唐と出会い、1963年(昭38)に唐が率いる状況劇場に参加。60~70年代、商業演劇や新劇などに対抗し、小劇場を中心にブームが起きた「アングラ(アンダーグラウンド)演劇」の中心的女優となった。67年に唐と結婚。夫妻の家では劇団員だった故根津甚八さん、麿赤児(78)小林薫(69)らがけいこしていた時代もあった。68年に唐との間に長男の義丹を出産。88年に離婚した。

94年には舞台げいこ中にセットから転落し、頸椎(けいつい)と背骨を負傷。それでも開始日を2日遅らせただけで、痛み止めを打ち、舞台袖に鍼灸(しんきゅう)師を待機させながら公演を全うするなど、演劇への情熱は人一倍だった。 テレビではNHK大河ドラマ「黄金の日日」(78年)に出演。TBS系人気ドラマ「3年B組金八先生 第4シリーズ」(95~96年)では、武田鉄矢演じる熱血金八先生と対立する石川千春教頭役として、憎まれ役に徹しきった。

数年前から義丹の自宅で同居。最後の舞台は2017年の「六条御息所」だった。

義丹は書面で、「私の父である唐十郎とともに劇団『状況劇場』を興し、60年代70年代のアングラ演劇のシーンまっただ中を疾走しました。父、唐十郎とは離婚しましたが、最後まで盟友としての親交はありました」と生涯続いた父母の絆を告白。「唯一無二のアングラ女優人生を全うして、一片の悔いなき人生だったと思います」と母の女優人生を評した。

◆アングラ演劇 60~70年代に舞台界を席巻した小劇場運動で「アンダーグラウンド演劇」の略。寺山修司さんの天井桟敷、唐十郎の紅テント、佐藤信の黒テント、串田和美の自由劇場があり、代表的アングラ女優に李麗仙さんのほか、新高恵子、吉田日出子、白石加代子らがいる。