女優李麗仙(り・れいせん)さん(本名大鶴初子=おおつる・はつこ)が、6月22日に肺炎のため都内の病院で亡くなっていたことが25日、分かった。79歳。東京生まれ。葬儀・告別式は家族、近親者で行う。元夫は劇作家の唐十郎(81)、俳優大鶴義丹(53)は実の息子。

李さんは「アングラの女王」だった。1960年代から70年代にかけて、アンチ新劇を標榜(ひょうぼう)したアングラ演劇が人気を呼んだが、その中で李さんは大スターだった。若者でぎっしり埋まった紅テントの舞台に、李さんが登場すると、方々から「李(り)!」とかけ声が飛んだ。見る者は唐の作品を楽しむと同時に、李さんの姿、声、歌に魅了された。状況劇場には根津甚八、小林薫の若手スターがいたが、絶対的センターは李さんだった。

在日韓国人だった李さんは、日本名を持っていたけれど、70年代に日本国籍を得てからも「李礼仙(後に麗仙と改名)」と韓国名にこだわった。「心までは日本に渡していない」と、当時としては珍しい韓国名で活躍した女優だった。

73歳で、29歳の時に主演した唐作品「少女仮面」でヒロインを演じた。白いスーツ姿でさっそうと現れた李さんは格好よかった。別れても、唐作品が大好きだった。唐との二人三脚は離婚後も続き、最後までアングラの女王だった。【林尚之】