佐藤二朗(52)主演のNHK連続ドラマ「ひきこもり先生」(土曜午後9時)に注目が集まっている。

コメディー演技の印象が強い佐藤が演じる元ひきこもりの先生姿に、SNS上で「二朗さんの言葉に感動する」「二朗さんはまり役」「本当に響く作品」といった声が多くみられる。作品の企画と、第4~5話(3、10日放送)の演出を担当した石塚嘉監督がこのほど、日刊スポーツの取材に応じ、佐藤とその娘役を演じる吉田美佳子(22)の親子関係について語った。

同作は佐藤演じる元ひきこもりの上嶋陽平が、とあるきっかけで、不登校生徒が集まる学級の非常勤講師に着任し、悪戦苦闘しながら周囲を巻き込み、“1歩踏み出す”人びとを描く物語。

吉田が演じるゆいは陽平と5歳で離ればなれに。ひきこもっていた陽平が不登校生徒の集まるクラスの非常勤講師に就任したことを記事で知り、十数年ぶりに再会する。陽平と不登校生徒の関係とともに、親子関係もドラマの両輪となる。

石塚監督は「ひきこもりの方や不登校の子どもに取材を重ねると、自分を責めている、自責感情みたいなものがすごく強かった。そういう気持ちをどう表現しようかということで、家族や大事な人をある種、傷つけてしまうというか、そういうところが一方で重荷であるし、一方で救いにもなるはずだよねという話になりました。それで娘さんを設定したんです」と娘の存在の意義を語った。

吉田の起用について「癒やしでもあり、救いでもあり、重荷でもあるキャラクターを託したかった。(吉田の)ピュア、透明なところ。ちょっと誤解があるかもしれないけど、“色が付いていない役者さん”みたいなことが1番彼女にふさわしいかなって思います」と明かした。

吉田が石塚監督の作品に出演するのは19年放送同局系「パラレル東京」以来2度目。当時は、倒壊ビルに生き埋めになり、電話の声だけでやりとりする女子高生役を演じた。「3日間とじこめられたメークをして、衣装も髪もボロボロ。夏の盛りに撮ったんですけど、彼女は2、3日食べずに臨んだ。顔中泥だらけにしてがれきの中に入って」とビルのシーンを振り返った。

約2カ月後に、電話の声だけ別で撮る際にも吉田は役作りで絶食してきたという。当初はスタジオセットで電話するだけだったが、「せっかくなので」と美術スタッフにセットの中にがれきを作ってもらい、吉田は3~40センチのすきまに入って電話の演技をした。「いやがるかなって思ったらすごい喜んで、『ありがとうございます』って。そういう風なアプローチをやろうとしてる子なんだなって思いました」。そんな姿勢をかって今作もオファーしたという。

3日放送の第4話では、佐藤と吉田の再会シーンが1つのポイントとなる。十数年ぶりに父と娘が会うと、同じ言葉を繰り返してしまったりして会話のキャッチボールがうまくいかないという制作スタッフの実体験に基づいたシーンだ。「どうしたらセリフのやりとりができるだろうってことで、美佳子さんと二朗さんが相当やりとりをしてくれました。『こういうふうにやるので』『じゃあ、このタイミングで』とか、お互い芝居のやりとりをしていましたね。リアリティーがある芝居になっている」と話した。

佐藤について「プランを持って緻密に計算している」と評し「(その佐藤の演技を)美佳子さんはちゃんと受け止められるというか、受け止めた上でちゃんと渡していける。そしてまた出てきたものを受け止められる」と絶賛した。

続けて「そのやりとりが親子のシーンでできた。あれだけのすごい力を持った佐藤二朗さんという俳優さんを受け止めて、渡し返すっていうのは、すごいなって思いましたね。経験を超える何か、その場の本物の、本当の空気感みたいなものをしっかり出してもらえたかと思います。二朗さんも美佳子さんも」。

第1~第3話ではネグレクト、家庭の貧困、いじめなどさまざまなテーマで展開してきた。物語の後半について「ここまで個別の話で1人1人の境遇を見ていったんだけど、それっていうのは、どこに大きな根っこがあるんだろうっていうのを4話5話でみていく。ちょっとフェーズが変わる、ステージが変わると思って作りました」と制作の意図を説明。「陽平のパーソナルな部分にグーっと入っていく。3話までは陽平が人々にどう寄り添っていったかを描きました。これからは陽平という人が本当は何を考えているのかに物語の見どころがあります」と熱弁した。【佐藤成】