〝埼玉の名将〟は静かにグラウンドを去った。浦和学院(埼玉)で30年間指揮を執り、今大会を最後に退任を宣言していた森士監督(もり・おさむ=57)は、第8日第2試合で日大山形(山形)と対戦。

 4投手の継投策で接戦に持ち込み、9回は二死満塁にまで追い込みながらも主将で4番・吉田瑞(3年)が内野ゴロに倒れ、3―4と惜敗。名将の最後の夏が幕を下ろした。

 泣き崩れる吉田瑞に指揮官は「負けても堂々と前を向け」と声をかけ、相手ナインを称えて見送り、帽子をとってグラウンドに一礼した。

 試合後は「甲子園で1勝する難しさを改めて思い知らされた。先行できて流れをつかんだが、実戦から離れていたこともあって守備からリズムが作れなかった。紙一重の戦いだったと思う。最後に夢舞台に連れてきてくれた選手に感謝ですね」と清々しい表情を見せた。

「浦学」を常勝軍団に育て、2013年の選抜大会で優勝、春夏合わせて22度目の甲子園。試合中はさまざな思いが去来した。

「ベンチから見た映像がすべてフィードバックするような印象でした。どの試合も財産。最高の舞台です」。無念の初戦敗退となり、後進に指導を託すことになるが「いつかまた大観衆が戻った甲子園で球児がプレーできることを望んで(身を)引きたい」と締めくくった。