謝っているのに、またまた炎上――。名古屋市の河村たかし市長(72)が23日、〝金メダル事件〟について市役所職員に向けた直筆の謝罪文を出したことが明らかになった。しかし、本来なら組織内部への謝罪として外部には漏れないはずが、あっさり流出。しかも、その内容にケチをつけられて、再び炎上したから目も当てられない――。


 河村氏は今月4日、東京五輪ソフトボールで金メダルを獲得して表敬訪問した後藤希友投手(20)の金メダルをおもむろに手に取ると、突然ガブリ。このほかにも「恋愛禁止か?」などとセクハラ発言まで飛び出して大炎上していた。

 この日、明らかになった市役所職員へ向けた謝罪文は手書きで、市役所に抗議の電話が殺到したことなどを受けての謝罪と反省が記されていたが、ネットでは「字が汚すぎて誠意が伝わらない」「字を間違えたら書き直しくらいしろよ!」「内容が薄すぎだろ」など、辛口コメントのオンパレード。各ワイドショーは河村批判を繰り広げた。

 確かに謝罪文は走り書きのような汚い字で、誤字はごまかして書き、内容も深くは踏み込まない簡単ものだった。とはいえ、河村氏は何度も謝罪した上に3か月間の給与返上を申し出て、2日間のハラスメント講習も受講している。しかも、この謝罪文は市役所内部に配布した、いわば内部文書だ。これが流出して批判を受けるのは少し気の毒な気もするが、いったい、どうして炎上を繰り返してしまうのか?

 政治家や経営者などを顧客に持つスピーチライターの蔭山洋介氏はこう分析する。

「河村氏は自身の中にある家父長的な昭和的価値観に縛られて、現在の価値観についていけていないように見える。だから、〝金メダル事件〟でも自分が悪いという認識を持てず、言葉では謝罪しながら、言動の端々に反省の態度が見られないため炎上が続いてしまう。これは同じく炎上した森喜朗氏や張本勲氏らと共通する点です」

 蔭山氏によれば、謝罪で取り戻せるのは、取りあえず謝罪して筋を通す論理的回復と、相手を納得させる感情的回復がある。

 真の意味で許されるには感情的回復が要求されるが、女性蔑視発言で東京五輪組織委会長を辞任した森氏の場合は、謝罪会見を開いて筋を通したかに見えたが、感情的回復を目指す過程で質問者に逆ギレ。自らちゃぶ台返しして組織委会長辞任に追い込まれた。

 同じく女性蔑視発言した張本氏は、謝罪文を提出して生謝罪も行って筋を通したが、その中身は言い訳がましい謝罪文と、たったふた言だけの生謝罪。明らかに反省の色が見えなかったことで、炎上が長引く結果になった。

 河村氏の場合は、論理的回復も感情的回復も図れなかった〝森型〟ではなく、謝罪による論理的回復に徹して感情的回復をあきらめた〝張本型〟と言えるだろう。

 河村氏は今年4月に名古屋市長に再選したばかり。今後の市政運営のためにも、何とか燃え盛る火を鎮火させなければならない。

「ひろゆき氏が『100回謝ればいい』と言っていたが、ネット社会ではそれもひとつの火消しの方法。何を言われても謝り続ければ、攻める側はだいたい戦意喪失してしまいます。ただ、大事なのは謝罪後の振る舞いで、結局、本人が問題を認識できていなければ、後から言動に出てすべてが帳消しになってしまう。こう言うと元も子もないですが、問題を認識できない人に認識しろと言っても無理な話なんです」(蔭山氏)

 蔭山氏の言葉を裏返せば、常に社会にマッチした価値観へとアップデートしていることが大事ということになる。本来なら政治家に一番求められる能力のはずだが…。