落語協会の新真打ち、志ん吉あらため古今亭志ん雀、小んぶあらため柳家さん花、緑君あらため柳家緑也、柳家花いちの昇進会見がこのほど行われた。

同協会の柳亭市馬会長は、昨年春以来のコロナ禍を振り返り「噺(はなし)家としての節目である真打ち昇進。披露パーティーも中止され、どうなるか分からないこの世の中で昇進を迎え、心落ち着かせて向かうことができないかもしれない」とおもんぱかった。その上で「こういう最中にしかできないことを見いだしているのは頼もしい」と、4人にエールを送った。

個性豊かな4人がそろった。

志ん雀は、もともと俳優を目指し、テアトル・エコーの養成所に通っていた時に、講師で来ていた師匠の古今亭志ん橋と出会った。「当時は師匠ではありませんから、気前よく褒めてもらったのを真に受けて、こっち(落語)がいいかなと」と笑った。艶笑噺が得意だが、新作も積極的にかけていきたいとした。

さん花は大学を中退してお笑い学校に通っていた時、落語のDVDを見て衝撃を受けたという。お笑い学校に入る前に亡くなった父親に「お前は好きなことをやって生きていけ」と言われたことを思い出し、落語家になることを決めたという。

柳家花緑門下からは2人。緑也は歌舞伎好きで「披露目(興行)でも歌舞伎の噺をかけたい」と話した。ちなみに、緑也という名前は、歌舞伎俳優尾上松也の父松助さんが以前名乗っていた名前。歌舞伎好きの弟子のため、花緑が松也に手紙を書いて承諾をもらった。

花いちは、入門前は名古屋で漫才コンビを組み、吉本興業に所属していた。落語との出会いは、大学3年。鵜(う)飼い舟に乗って花緑の噺を聞いた。「落語ってこんなにおもしろいのか」と衝撃を受けたという。その後、漫才コンビを解散した時、花緑のことを思い出した。「(花緑への入門が)ダメならあきらめようを思っていた」と、いちずな思いをかなえた。

披露興行は、上野・鈴本演芸場の9月下席を皮切りに、新宿末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場と、11月まで行われる。不透明な世の中だが、最後まで無事に興行が行われることを願いたい。