終戦後も30年間フィリピンで任務を遂行し続けた旧日本軍兵士の小野田寛郎さんを描いた映画「ONODA 一万夜を越えて」(アルチュール・アラリ監督、8日公開)の公開直前会見が5日、東京・フランス大使館で行われた。

小野田さんの30年間を追った著書を元に、フランス人のアルチュール監督が映画化。今年のカンヌ映画祭の「ある視点」部門のオープニング作品に選ばれ、フランスでは7月21日から公開され、ヒットしているという。

青年期の小野田さんを演じた遠藤雄弥(34)は「久々にキャストの皆さんと会えてうれしい。監督は柔和な方で、俳優から出てくるものを受け取ってくれ、役者としてやりやすかった」。成年期を演じた津田寛治(56)は「映画を見た方からは好評で、こんな日本兵は見たことがないと言われました。これまでの日本兵は悪役か、日本では大和魂といった点から描かれますが、今作はどちらにも属さない。現代の日本を生きる日本人のグルーヴ感とシンクロしていると思います」と話した。

撮影はカンボジアで行われたが、水や食べ物があわなかったという。遠藤は「キャストもスタッフも全員が発熱や下痢に悩まされ、満身創痍(そうい)でした。でも、ある種のストイックさで臨めました」。監督の演出について津田は「人としての表現を求められました。疲れた芝居をするのではなく、ジャングルを走り続け、本当に疲れてほしいと言われました。仕事のやり方としても、人生としても転機となった作品になりました」。2人で1役を演じたことには「擦り合わせはしませんでした。監督が役者を変えることで、心情の変化を出したかったのだと思いました」。

コロナ禍で、会見や公開にむけて、アルチュール監督の来日はかなわなかった。ビデオで「キャストのみなさんに心から感謝します。共有した時間は楽しく、日本とフランスのコラボは豊かで実り多かった。深い喜びを共感できたことは僕の誇りです」などと語った。

最後に遠藤は「毎日がクライマックスで毎日が豊かでした。キャスト、スタッフの思いが詰まった、汗と涙の結晶の作品です。公開は感無量だし、3時間近い長編ですが体感時間は早いと思います。人としてどう生きるべきかを問う作品だと思うので、何かを感じてもらえたら幸いです」とあいさつした。

会見には仲野太賀(28)松浦祐也(40)カトウシンスケ(40)井之脇海(25)イッセー尾形(69)も出席。フィリップ・セトン駐日大使も感謝の言葉を述べた。