細野晴臣(74)が21日、都内で行われたドキュメンタリー映画「SAYONARA AMERICA」(佐渡岳利監督)公開記念舞台あいさつに登壇した。トークの中で「はっぴいえんどの時の気持ちが、よみがえってきていて」と、作詞家の松本隆氏(72)、ギタリストの鈴木茂(69)、13年に亡くなった大滝詠一さんと組み、日本語ロックの礎を築いたバンド「はっぴいえんど」について言及した。

「SAYONARA AMERICA」は、細野のデビュー50周年を記念し、その創作活動の軌跡に迫った、19年のドキュメンタリー映画「NO SMOKING」の先を描いたライブ・ドキュメンタリー映画で、同年に米ニューヨークとロサンゼルスで開催した細野初のソロライブと、直近のトークシーンをまとめた。佐渡監督は「『NO SMOKING』は人生の生い立ちからたどっていった映画だったので、ライブのシーンをあまり入れられなくて。なので、大音響と大画面で楽しめるようにしたかった」と製作の動機を語った。

細野は「こんなに大勢の方がいらっしゃって、世の中が元に戻っているんだなと実感しました」とコロナ禍の中、訪れた観客に感謝した。その上で米国ツアー後、コロナ禍に見舞われたことについて「まったく予想していなかった。10年くらい前の出来事のような気がしていて、バンドメンバーもそうだと思うんだけど、気持ちも変わってしまった」と心境を語った。そして、映画冒頭に収められているモノローグ映像について「だから本作をライブだけの映像にするのは違和感があるなと思って今、感じているシーンをどうしても入れたかったんです。今の自分から見て2019年の自分はどうだったか。それを考えてまとめました」と語った。

「SAYONARA AMERICA」の由来について尋ねられると、細野は「単純に言うと、遠くなっちゃったなという気持ちと、はっぴいえんどの時の気持ちが、よみがえってきていて。あの頃も、自分たちの居場所があまり見つからない感じがしたんです。アメリカと日本の間で宙ぶらりんだった。そんな気持ちを、ある意味、僕はずっとひきずっていると今回思いましたね」と語った。その上で「本当は『SAYONARA NIPPON』という言葉もつけたかったんですけど、長すぎるので、アメリカに申し訳ないんですけど、つけませんでした」と説明した。

舞台あいさつの最後に、佐渡監督は「細野さんと2019年をご一緒して、こんな幸せなことはなかったです。今、大阪で細野観光という展覧会をやっているので、お時間があれば大阪にお越しいただけたらと思います」と語った。細野は「(大阪の舞台挨拶で)大阪に住みたいと言いましたが、いま僕は東京に住んでいますので、東京が大好きです」と言い、笑った。