女優大竹しのぶ(64)が、舞台「ザ・ドクター」(2~5日、兵庫県立芸術文化センターほか)開幕前日の1日、大阪市内で取材会を開き、コロナ禍が収まらなかった1年を振り返り、今作の上演に感謝した。

「1月(フェードル)から3本、芝居をし続けていること、客席にお客様がいることが、今までこんなにありがたいとは思わなかった。お芝居を見るために、この空間(劇場)の中にいてくださること、本当にありがたいです」

昨年来、演劇界は新型コロナウイルスの影響で、上演中止が相次いだ。観客数の制限もかかり、無念の思いもあっただろう。そんな中、すでに埼玉、東京公演を終え、2日からは兵庫公演開幕を控える。兵庫の後は豊橋、北九州でも上演予定となっており、公演も折り返し地点を過ぎた。

今作はロンドン発の話題作で、イギリス最高峰の医療機関が舞台。大竹は所長のルース・ウルフにふんし、宗教、ジェンダー、階級格差など多くの社会問題に直面し、医師としての自らを見つめ直す物語だ。

大竹は偶然、ロンドン滞在中に19年初演版を現地で観劇。「役者さんの細やかな演技力に魅了された」と振り返った。時を経て、その舞台への出演オファーが舞い込み「え? 日本で? 私が?」と驚いたことも明かした。

スタッフ、出演者が一丸となって舞台を作り、開幕後も日々、結束力が高まり、3カ所目に入った。

「1公演が終わるたび、円陣を組んで『よ~、ポン』と一本締めをしています。その『ポン』のために生きている感じです」

舞台に専心する日々と、閉幕後には「明日のことを考えなくて寝られる」と思いをはせた。

今作が閉幕すれば、2021年も終わる。今年はコロナ禍で不安視された東京オリンピック(五輪)も無事開催され、大竹は、閉会式で子供たちとパフォーマンスを披露した。

緊張感を感じなかったと知人から言われたそうで、三谷幸喜氏からは「(五輪と)知らなかったんじゃない、この人」とまでいじられたという。

ただ、これは、大竹によると、心構え、準備ゆえ。「目的がはっきりしていたから。子供たちと一緒に未来へ、祈ろうって。だから、うまく見せようとか思わなかった。だから、あがらなかった」と話していた。