ヤクルトを20年ぶりの日本一に導いた高津臣吾監督(53)が「正力松太郎賞」を受賞した。就任2年目の今季は前年の最下位からペナントレース終盤の猛チャージで一気にリーグを制すると、日本シリーズでも大熱戦の末にオリックスを撃破。「絶対大丈夫」の合言葉とともにチームをまとめ上げた〝高津イズム〟を、ヤクルトOBで本紙評論家の伊勢孝夫氏が明かした。


 高津監督が現役時代の1993年、西武を破って日本一となり「正力賞」を受賞したのは野村克也監督。その恩師と同じ栄誉を手にしたことには「肩を並べたとは思わない。チームみんなが導いてくれた。その代表として胸を張っていただきたい」と謙虚に話した。

 では、前年最下位に沈んだチームをどうやって立て直したのか。高津監督が「(選手の)力を発揮しやすい環境づくりは心がけている」と話しているように、選手を信頼して送り出し、失敗しても切り捨てない。その起用法を一貫。また、選手層の薄さから無理使いで故障者が続出してしまう「ヤ戦病院」と言われた伝統的な状況も、極力避けてきた。

 伊勢氏によると「高津監督の采配はオーソドックスなんやけど、あいつのいいところは〝観察眼〟にあると思う。選手時代からそうだったが、他人のいいところは取り入れ、失敗を繰り返さない。周囲の空気をよく観察する性格やったね。高津監督と仲のいい古田(敦也)は、監督としてうまくいかなかったわけなんだけど、その古田からいろいろ話を聞いて『これはやっちゃダメ』『ここは見習おう』というのを突き詰めてやっている。古田に限らず、周囲の誰からも学ぼう、学んでやろうという謙虚な姿勢が、選手にも信頼され、成功した理由なんじゃないか」という。

 その結果、あせらずじっくり育てた高卒2年目の奥川は大きな戦力となり、楽天を戦力外になった今野と近藤は「再生工場」で、救援陣に欠かせない存在となった。高津監督自身、メジャーでプレーし、そこで学んだ経験も生きているという。

 伸び盛りの奥川、村上を投打の中心に、来季も高津ヤクルトが強さを発揮しそうだ。