【取材の裏側 現場ノート】大相撲の一年納めとなった11月の九州場所で、元横綱白鵬の間垣親方(36)が〝親方デビュー〟を果たした。日本相撲協会の紺色のジャンパーに袖を通し、館内の警備などを担当。打ち出し後は、お楽しみ抽選会の当選者に景品を渡す役目もこなした。初日の業務を終えると「全てが新鮮で充実していた。あっと言う間。いい経験になった」と感想を語っていた。

 角界では1日でも入門が早ければ年齢に関係なく「兄弟子」となり、弟弟子との間に厳しい上下関係が生まれる。それは親方の立場になっても変わらない。新米親方であれば、先輩親方の指示に従うのが慣わしだ。ただ、そこは優勝45回を誇る大横綱。九州場所では、先輩の一人が間垣親方に気を使って「自分のやりやすいようにやってください」と声をかける場面もあった。

 すると、間垣親方は次のように答えたという。「親方になったばかりで、ゼロから勉強していかないといけない。みなさん(他の親方)と同じようにやらせてください」。親方の仕事は何もかもが初めての経験。そこに対する好奇心もあっただろうが、大横綱が真摯(しんし)に学ぼうとする姿は角界内でも好感を持たれていたようだ。

 現役時代は少年相撲大会「白鵬杯」を開催して競技の普及に努め、力士会会長として被災地の土俵再建などにも尽力してきた。ここから親方として、どんな〝手腕〟を発揮するのかにも注目していきたい。(大相撲担当・小原太郎)