熱男は、ご意見番の苦悩、葛藤を痛いほど感じ取っていた――。野球評論家の張本勲氏(81)が26日のTBS系「サンデーモーニング」で23年間務めた同番組の名物コーナー「週刊御意見番」のレギュラー出演を終えた。

 最後のゲストとして急きょ出演したソフトバンク・王貞治球団会長(81)が一目置いていたように、忖度しない物言いが張本氏の専売特許だった。スポーツ各界からねぎらいの声が届く中、現役プロ野球選手で異例とも言える6年連続ゲスト出演を果たしてきたソフトバンク・松田宣浩内野手(38)が張本氏の卒業を惜しんだ。

 11月末に知らせを聞くと、松田は野球人の思いを代弁した。「ヨイショ、ヨイショ、頑張れ、頑張れじゃ人間って伸びないですよね。節目で上から厳しく言ってくれる大人がいないと僕でも無理やと思います。僕の恩師たちもそうですが、この年になっても悪い時は悪いと言ってくださる。そういう方がいるから頑張ろうと思う。だから、張本さんは本当にすごい存在でした。プロ野球には1週間に1回やけど、ああいう厳しい指摘をしてくれる方が絶対に必要だったと思います」。かみ締めるように紡ぎ出した言葉に、寂しさがにじんだ。

 熱男はさらにこう続けた。「古いと言ったら古いんでしょうけど『何が古いんだ!』と僕は思うんです」。プロの世界に身を置き続けて来季で17年目を迎える。「野球界だけの話じゃなく、若い人も年を重ねて周りが見えるようになれば分かることがある。耳の痛いことを言ってくれる人がいることがどれだけ尊いか」。組織において誰しもが嫌われたくないという意識が強い中で、敬遠されがちな役回りを買って出る人間の尊さを知っているからだ。

 張本氏は何百万人という視聴者が待つテレビに向かって、毎週はっきりと物を言うスタイルを構築。世の中がそれを求める中で、一つ間違えばバッシングの対象となる立場だった。平穏を保つのが難しい中で23年間、毎週続けてきたことに「すごい存在」との思いが自然と湧いた。

 張本氏が一線を引く流れに「良いのか悪いのかは分かりませんが、社会もそうですし、野球界も優しくなりすぎる気がするんですよね…」と漏らした松田。苦悩と葛藤を抱えて発してきた偉大な先輩の〝深イイ喝〟に「野球人は分かってますよ」と言葉を贈った。

 自らも通算1811安打、301本塁打の実績を誇り「40(歳)手前にもなって…」と言いながら盛り上げ役を買って出てきた。自発的とはいえ、スタイルを貫く葛藤を知っている。熱男は時代の流れを受け入れつつも、失ってはならないものを伝えていくつもりだ。