俳優古田新太(56)が13日から、KAAT神奈川芸術劇場で、舞台「ロッキー・ホラー・ショー」(東京は2月12~28日、PARCO劇場)で3度目にして最後の主演を務める。このほど日刊スポーツの取材に応じ、作品への思いや俳優観を明かした。

5年ぶりに同作の主人公フランク・フルターを演じる古田は「本当は前回でやめるつもりだったんですけど…」と告白。後継者を探すように要望されたが、「いろいろ探したんですよ。生田斗真とか城田(優)とかでもいいのかなとかって。でもどうにもみんなキレイで。やっぱちょっとフランク・フルターっていうのは化け物感があるから。プロデューサーに『どうフルターいる?』っていわれて『おれ?』って。ある程度歌えてある程度踊れて気持ち悪い、女装できるおじさんってなってくるとまあおれかっていう。世界最高齢であることは間違いないです」と笑いを交えて説明した。

古田にとって思い出深い作品だ。小学校低学年でみた映画版に心を奪われた。「主演やっていたティム・カリーっていう役者が本当に名優なんですよ。ものすごく面白い俳優さんで、しびれちゃったんですよね。いつか『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなオリジナルを日本でできたらいいのになって『劇団☆新感線』で頑張っているんですけど、かなっていない。しょうがないから『ロッキー・ホラー・ショー』をやっている」。

再演に次ぐ再演だが、「全然覚えていないです」と言い切る。「どんな舞台だろうがどんな映画だろうが終わった瞬間忘れていますから。年間3~4本舞台やってドラマ2本、映画2本くらいやっていたらいちいち覚えてらんないです。昨日も稽古していてこんなシーンあったっけって」。多忙な古田ならではのスタイルだ。

同作については役作りはしないという。「(劇中で)すぐ人を殺すけど、そこに深い意味は無いし。恨みとか、たくらみとか全然無いし。猿の落書きみたいな台本。だからこそ他に類を見ない傑作なんですよ。いろんな問題はあるのかもしれないけど、そこに性的な差別も何にもなくて、みんなでパーティーしましょうっていう。だからすがすがしいんですよ。オイラはすごく平和な作品だなって思って大好きなんですよ」と独特の表現で作品の魅力を伝えた。

観客にダンスの振り付けをして、一緒に踊るなど参加型の作品であるため、コロナ禍での上演はタイミング的によくないという。「時期的には最悪。だからいろいろ作戦を練っています。ボタンを押すと『ヒュー』とか『ブー』とかいう声が出るグッズがあって、(観客が)そういう気持ちになったらボタン押せば声出さなくて済む。劇場の売り場で、売っているグッズは、買った方が楽しいよって書いて下さい(笑い)」。

映画にドラマに引っ張りだこだが、「舞台俳優」を自認する。「客前で仕事するのが好きなので。笑っていたり泣いていたりするのをみて、お芝居をするのが好き。相手役とか監督とかどうでもよい。お客さんありきだから。お客さんが最後立ち上がってわーって拍手してくれたりとか、下ネタいってゲラゲラ笑うとか、寝ている客を起こせる距離っていうのが好きなんだよね」。

また自身のことを「喜劇人だと思っている」とも。「笑うっていうのが一番ダイレクトにこっちに伝わってくる反応なんですよね。感動したり泣いたりっていうのは、こっちに伝わってくる反応としては弱いんですよ。鼻すすっていたりそんな音だけ。小劇場、アングラ、インディーズの出身だけど、やっぱり喜劇をやっている人間としてはお客さんが笑ってくれるっていうのが一番幸せですね」。

大の酒、たばこ好きでも知られる。「芝居とお酒とたばこならどれを選ぶか?」と聞くと、大真面目にこう答えた。「どれかを選ばないとってなったら、死にます。はい。お酒、たばこ、芝居、死ぬだったら、死ぬを選びますね。どれも辞める気がないので」ときっぱり。「今のところ、それやめないと死刑っていう法律がないので生きていますけど」と補足してニヤリと笑った。最後の“フルター”でも何かやってくれる予感がした。【佐藤成】

 

◆舞台「ロッキー・ホラー・ショー」 73年にロンドンの小劇場で幕を開けたリチャード・オブライエンの伝説的作品。熱狂的なファンをもつカルト・ミュージカル。古城を舞台に城の主(フルター)と人造人間、カップルらのはちゃめちゃな愛と欲望を描く。75年には映画化。共演は小池徹平、ISSA、昆夏美、フランク莉奈、峯岸みなみ、東京ゲゲゲイ、武田真治、ROLLY、岡本健一ら。東京のほか大阪・森ノ宮ピロティホール(1月20~23日)、広島・上野学園ホール(1月29~30日)、福岡・北九州芸術劇場大ホール(2月4~6日)でも上演。

 

◆古田新太(ふるた・あらた)1965年(昭40)12月3日、神戸市生まれ。大阪芸大舞台芸術学科在学中の84年「劇団☆新感線」入団。舞台は「髑髏城の七人~アカドクロ~」など多数。TBSドラマ「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」「逃げるは恥だが役に立つ」、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」、映画「シン・ゴジラ」など数々の作品に出演。趣味はフィギュア収集、熱帯魚観賞。家族は元タレントの妻と1女。173センチ。