【赤坂英一 赤ペン!!】今オフ、パイレーツの筒香嘉智が意欲的な野球振興活動を行っている。故郷の和歌山県橋本市に総工費2億円で天然芝の球場を建設し、野球少年を育成する「筒香スポーツアカデミー」を発足。近い将来、小学生の野球チームもつくるそうだ。

 筒香は情報発信にも積極的で、連日様々な会見やオンラインイベントに登場。その中のひとつ、一般社団法人・日本スポーツマンシップ協会(JSA)主催のセミナーに私も参加し、筒香の野球振興に関する提言をじっくり聞く機会があった。

 まず慶応高校野球部・森林貴彦監督が高校野球指導の現状や課題などを語り、これを受ける形で筒香が登壇。ここ数年の野球人口の減少に対する危機感から切り出した。

「残念なことに、最近は野球をする子供が減っているという話をよく聞きます。その背景にはいろんな面で、野球とかスポーツをやらせることが、子供たちのプラスにならないと、保護者の方たちが考えているということがあるようなんですね」

 実際、少年野球の世界では指導者の行き過ぎた指導、子供同士のイジメなどが長年深刻な問題となっている。そのため、野球を敬遠する保護者が私の知り合いにもいる。

「でも、スポーツをしていく中で、勇気を持ってチャレンジしたり、仲間と協力したり、時に争ったりする。スポーツには、そういう人生でプラスになることがたくさんあると、僕は思うんです」

 例えばメジャーリーグでは、試合前の練習後、グラウンドに散らばったボールを選手全員で拾い集める慣習がある。有名なスターも無名の若手も一切関係なく、みんなで後片付けをするのだ。

「その時、ボールを拾わないでいると、『バッド・チームメート』と選手たちに言われるんです。目の前のボールが見えてないのかよ、という感じで。半分冗談ですけど、半分本気なんですよ」

 こういう慣習が根付いているからこそ、自分も「グッド・チームメート」と呼ばれるような行動を心がけるようになった、と筒香は強調していた。

「(メジャーでは)スーパースターほど人格者というか、リスペクトされている選手が多いと思いました。そういう人間性が身につくには、小さいころの行動が大きいし、子供のころからの習慣が大事なんです。だから、そういう子供のころからスポーツをしてほしい」

 そう語る筒香の壮大な「野球振興大作戦」が、将来どのように実を結ぶのか。しばらく長い目で見守りたいと思う。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。