石原慎太郎さんは、1987年に死去した映画スター石原裕次郎さんの兄として、芸能界とも深く関わった。

一橋大在学中の56年に小説「太陽の季節」が芥川賞を受賞し一躍スター作家になるとこの年、同作は映画化され、裕次郎さんがスクリーンデビューした。続く小説「狂った果実」も同年映画化。裕次郎さんが主演し、相手役は女優北原三枝(石原まき子さん)で後に2人は結婚した。同作では、慎太郎さんの助言から長門裕之さんの弟津川雅彦さんもデビュー。津川という芸名も「太陽の季節」の登場人物からつけられた。

石原まき子さんはこの日「ただただ残念でなりません」とコメントした。まき子さんは現在、石原音楽出版社の取締役名誉会長を務めている。

その後も「俺は待ってるぜ」「錆びたナイフ」「青春とはなんだ」など数多くの作品が映画化。同時に裕次郎さんもトップスターに上り詰め、日本で最も有名な兄弟ともいわれた。慎太郎さんが政治家になった後は、選挙では常に石原軍団が応援に駆けつけた。

96年には最愛の弟、裕次郎さんの生涯を描いた私小説「弟」を出版し、裕次郎さんの十回忌を迎える7月17日に発売。臨終を告げられてからも2度にわたり再び心臓を鼓動させた別れの場面やこれまで知られなかった秘話など、高度成長期が生んだヒーローの素顔を描いた。「弟」によると、まき子夫人が「裕さん、わかる、わかるわねっ」と体をゆすると、ただあえぐように息をするだけの裕次郎さんが、はっきりとうなずいた。慎太郎さんは「裕さん、もういいよ。もう死んでもいいんだよ」と繰り返したという。

「弟」は04年11月、テレビ朝日の開局45周年記念スペシャルドラマとして5夜連続で放送された。慎太郎さんを渡哲也さん、裕次郎さんを三浦友和が演じた。世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は5夜連続で20%以上を獲得。最終夜では、裕次郎さんの臨終場面の瞬間最高が33・1%をマークした。