役所広司(66)が「すばらしき世界」(西川美和監督)で主演男優賞を受賞した。96年「Shall we ダンス?」、97年「うなぎ」で2年連続受賞して以来、24年ぶり3度目の受賞に「さぼっていたわけじゃなく、一生懸命頑張ってきたんですけど…2年連続受賞で運が尽きたかと思いましたけど、帰ってこられた」と喜びをかみしめた。

「すばらしき世界」は、直木賞作家・佐木隆三氏の90年のノンフィクション小説「身分帳」を原案に、西川監督が長編映画としては初の原作ものに挑んだ映画。同監督は佐木氏の著書を愛読しており、15年に同氏の訃報をきっかけに同書を知り、ほれ込み、小説に書かれたことの背景を3年かけて取材、リサーチ。小説の時代設定を現代に置き換え、4年かけて脚本を完成させ構想から5年超で映画化にこぎ着けた。

役所は劇中で、刑期を終え、出所した元殺人犯の三上正夫を演じた。「まずは本当に、西川監督に作品に呼んでいただいたことに感謝します。素晴らしい俳優さんがいる中で、僕を選んでいただき、ありがとうございます」と、この日、ゲストで登壇した西川美和監督に感謝した。

その上で、24年ぶりのキネマ旬報ベスト・テン主演男優賞を受賞するまでのキャリアを振り返り「大分、長い間、この仕事をしていますけど。芝居が上手くなって撮影現場が面白い場所になれば良いなと思ってやっていますけど…四苦八苦して、なかなか楽しいということは少ない」と語った。そして「ですけど…この仕事を面白いと思える瞬間があって。(撮影のために製作陣が)用意してくれた場所、共演者が導いてくれて、次やったら楽しいかなと思っても、自分が芝居がうまいと思ったことが1度もない」と語った。

その上で「すばらしき世界」について「タイトルが、作る映画を後押しして、しっかりやれと励ましてくれた気がした。自分たちがいる場所は素晴らしいんだ、素晴らしく出来るんだという仲間が導いてくれた」と語り、胸を張った。