プロレスリングマスターが復活後に見据えるのは――。「2021年度プロレス大賞」で年間最高試合賞(ベストバウト)に輝いたノアの武藤敬司(59)が、復活と主役返り咲きを誓った。昨年2月12日の日本武道館大会で潮崎豪を破り、GHCヘビー級王座を初戴冠した一戦で受賞。「左股関節唇損傷」で長期欠場を余儀なくされ、GHCタッグ王座を返上することになったが、その闘志は全く衰えていない。


 ――改めてベストバウトを受賞して

 武藤 うれしいことですよ。俺は常に「試合は作品」というふうに言っているけど、自分で描いた作品を評価されることがアーティストとして一番うれしいことだから。

 ――10年ぶり3度目の同賞受賞だ

 武藤 10年ぶりか! じゃあ、ベストバウトの最年長は天龍(源一郎)さんの65歳ってことだけど、それでいうと(ニヤリ)。

 ――左股関節唇損傷で長期離脱する

 武藤 もう、なるようにしかならないというかね。正直、今回こうしてベストバウトを取らせていただいて、もうそんなに欲はないんですよ。「何をしたい」とか「MVPを取りたい」とか。これでまだガツガツしてたら、なんか俺がプロレス界の足を引っ張っちゃうんじゃないかなとも思うからさ。ただ、一方で求められるレスラーであり続けたいと思うし、求められる仕事をし続けたいとも思うよな。レスラーである以上。

 ――どのくらいの離脱になる見込みか

 武藤 ちょっと長期になるかもしれねえ。この体だから、今みたいに寒いと固まっちゃうから。まあ、暖かくなるころには復帰したい。ベストバウトを再び狙えるコンディションを目標に。プラス、今回タッグのベルトを返上しないといけなくなったから、そういう意味でまた〝夢の続き〟を追いかけていきたいよ。前に公言した通り、60歳という還暦の間に「赤いベルト」を取りにいくのが夢だからさ。

 ――復帰してGHCナショナル王座を狙うと

 武藤(うなずいて)還暦には普通の人は赤いちゃんちゃんこを着るけど、俺はベルトを。(誕生日の)12月23日を越して1年間、いつでもいいんだから。その間にシングル王座に挑戦できるコンディションまで持っていきたい。今さら何がやりたいとかじゃない。俺の小さな夢だから。大それた夢でもないだろ?

 ――とはいえ股関節の状態はどうなのか

 武藤 去年の10月くらいから予兆…違和感はあった。ひどくなってきたのは元日の試合の後くらいから。それでも1月5日は痛い中で試合したんだけど、(新日本プロレスとの対抗戦が行われた)8日の時には試合ができないというような状態で。

 ――そうだったのか

 武藤 7日に股関節の中に痛み止めの注射を打ってもらって、なんとかこなすことができた。でも、その後に痛み止めが切れた途端、本当に動かなくなってしまって。その悪い状態が続いている感じ。とにかく股関節が炎症を起こしてるから、その炎症さえなくなれば…だな。

 ――医師から現役続行に関して、何か言われなかったのか

 武藤 そんなことは医者じゃなくて俺が決めることであって。とにかく今はMRIとかを撮っても関節が炎症を起こして水がたまっているような状態だから。そういうのが治まってきたら、また夢の続きを見たいなって思います。

 ――今後の目標を

 武藤 去年のプロレス大賞は一応、MVPでも名前が出てたけど、(「プロレス大賞」選考委員会で特別選考委員を務めた)蝶野(正洋)と小橋(建太)が足を引っ張って取れなかったから(笑い)。しっかり治して、今度はあの2人に俺を推させてやりますよ。


【「目録」をチクリ?】武藤の表彰は8日の会見前に行われ、東京スポーツ新聞社・酒井修代表取締役社長からトロフィーと表彰状が授与された。酒井社長から「58歳で迎えた日本武道館大会には現在進行形の戦いがあり、最後の瞬間まで勝利を狙いにいく反骨心は勝敗を超越した感動を生み出した」と絶賛された武藤は、トロフィーを受け取ると「お、意外と重いな」と笑顔。試合を「ギリギリの戦いだった」と振り返りつつ、目録を手にしながら「あ、こっちは軽いか?」と笑いを取ることも忘れなかった。

 ☆むとう・けいじ 1962年12月23日生まれ、山梨・富士吉田市出身。84年10月5日の新日本プロレス越谷大会でデビュー。蝶野正洋、故橋本真也さんとの闘魂三銃士で90年代の新日マットをけん引し、化身のグレート・ムタは海外でも人気を博した。その後は全日本プロレス、W―1、フリーを経て21年2月にノア入団。得意技はシャイニングウィザード。188センチ、110キロ。