伝説のミュージカル映画をスティーブン・スピルバーグ監督が60年ぶりにリメークした。

旧作はあえて舞台装置のにおいを残したセットがドラマ部分を盛り上げたが、今回は自在なカメラがリアルに街中を映し出す。肉体の躍動をアップし、引きで街の息づく様子を伝える。

中盤の「アメリカ」が見どころで、旧作では屋上に限られていたダンスシーンが街頭に繰り出し、街行く人々を巻き込んで大きな輪が出来上がる。圧巻だ。

ジョージ・チャキリスが演じた敵役ベルナルドは今回キューバ系のデヴィッド・アルヴァレス。チャキリス版に比べると現代風に角が取れ、ソフトなたたずまいが印象的だ。彼に限らず今回の出演者は映画的に知られた人は少ないが、誰もが舞台キャリアを積んでいて歌と踊りにはすきがない。

旧作でほのめかし風だった人権やジェンダーの問題提起は、スピルバーグ流にセリフの端々にべったりと上書きされている。ウエットな人情物語の色合いが濃くなり、オリジナルにあった乾いた感じがなくなったのは少し残念だった。

旧作に続き、主要キャストの一角を担うリタ・モレノの貫禄に圧倒される。【相原斉】

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