期待の大砲候補は、どこが進化したのか――。ソフトバンク・王貞治球団会長兼特別チームアドバイザー(81)が13日、所用のためキャンプ地の宮崎を離れた。「特別チームアドバイザー」の肩書を加えて臨んだ初めての春季キャンプ。王会長は昨秋から本格的に指導する井上朋也内野手(19)の成長に目を見張った。

 昨秋キャンプで右手の使い方を熱心に指導。手のひらで強くバットを握ることでこねてしまう悪癖の矯正を促したのは、将来ぶつかるであろう壁を予知してのことだった。スポンジのように吸収力の高い19歳は、オフも「世界の王」の教えを胸に課題克服にまい進。「一番目立っていたのは井上。順調な成長ぶりを見せてくれている」と、昨秋から現場復帰した王会長にとっても収穫だった。

 進歩の跡はどこにあるのか。「われわれの世界っていうのは、はっきりと目に見えてこうということはないんですけど」と前置きした上で、王会長は次のように解説した。「ほんのちょっとしたことで打てる幅がちょっと広がるとか、バットの出方がちょっと今までより体に近いところから出るとかね。ほんのちょっとしたことなんですけど、それを意識してやってるうちはなかなかうまくいったり、いかなかったりするんですけど、だんだん無意識にやれるようになってくると確率が上がるんです。そういった意味では体も強くなっていますし、去年よりは一軍での期待ができるだろうと思っています」。

 19歳の逸材はオフの間、反復練習を重ねてきた。1月にはグリップを握る感覚をしきりに気にしながら振り込む井上の姿が筑後のファーム施設にはあった。「秋と比べて自分の中で結構変えているつもりです。力感をなくして振ってるんですけど、それでもあんまり飛距離は変わっていない。そんなに力はいらないんだなって感じています。結果が出ると正解なんだなって改めて感じますし、これからもやっていこうと思います」。今キャンプの紅白戦2試合で一発を含む3長打6打点。連日大暴れしていることもあり、意欲はさらに高まっている。

 王会長は対外試合が始まる22日に再びチームに合流する予定だ。「何年目とか関係なく自分のできることをやりたい」と前を向く井上。世代交代が喫緊のテーマである常勝軍団にあって、期待の〝王チルドレン〟はどこまで駆け上がれるか。