プロ9年目、阪神・梅野隆太郎捕手(30)が順調な仕上がりを見せている。11日に行われた日本ハムとの練習試合では9回に同点の適時二塁打をマークするなど、勝負強い打撃は健在だ。

 今キャンプではブルペンにも積極的に入り、若手投手にアドバイスを送っている。13日にはドラフト2位左腕・鈴木の球を受け「今の球はいいぞ!」「ちょっとコースがズレとるな。角度はいいんだからもったいないぞ!」。例年以上に若手を鼓舞する姿が印象的だ。

 昨オフはFA権を行使せず複数年契約で阪神残留を決めた。「ここ5、6年、捕手として一番試合に出させてもらって、いい思いも苦しい思いもした。楽しいこともつらいことも、共感し合えるチームでないと強くなれませんから」。そんな思い原動力になっている。

 体や気持ちは若くても年齢的にはチームを引っ張っていかなければならない立場。伝説の火の玉守護神から託された〝遺言〟も背中を押してくれているという。

 藤川球児氏が現役引退した2020年のシーズン中、遠征先の宿舎の部屋に呼ばれたことがあった。伝えられたのは世代交代の必要性について。梅野は「その年に引退することになるとは知りませんでしたが、経験豊富な球児さんの言葉は本当にありがたかったし、プレーヤーとして意気に感じた」と振り返り、伝説の守護神と語り合った貴重な時間は「自分にとっても大切な分岐点になった」。

 20年新春の本紙インタビューで藤川氏は「周囲からどれだけ叩かれても耐えて数字を残し続けた選手こそが真の一流。チームを本当の意味で背負いきれる選手。そんなエキスを阪神に残したい」と語っていた。昨季の阪神は0ゲーム差の2位と悔しい結果に終わった。梅野は「若い選手たちはまだ、シーズンの本当の厳しさを知らない。球児さんをはじめとした先輩方に教えていただいたように、自分も若い選手たちに〝気付かせてあげる存在〟になりたいし、やらないといけないと思っている」と静かに闘志を燃やしている。