先日、さいたまスーパーアリーナで、ロックバンドGLAYの全国アリーナツアー「GLAY ARENA TOUR 2021-2022“FREEDOM ONLY”」の最終公演を取材した。

客席から見るとかなりの観客が入っているように見えたが、コロナ禍での開催だけに当然、制限はある。取材した日の観客は1万3000人。この会場は、フルに使うと3万8000人は入るので、明るくなった時に確認すると、ややさびしい状況は否めない。それでも、今回のツアーは全国7カ所で14公演を行い、総動員数は10万人になったという。

この状況下で10万人の動員数というのは頭が下がる。イベンターも含めたスタッフの努力の跡がうかがわれる。

とはいえ、GLAYというネームバリューの大きさからすると、この数字に寂しさも覚えてしまう。

なぜなら、1999年に幕張メッセ駐車場に設営された特設ステージで開催したライブは1日で、20万人も動員した歴史があるからだ。当時の有料ライブの動員数としては世界記録に。エンタメの枠を超えた、社会現象にまでなった。その後も「GLAY EXPO」と名付けられたライブは、01年以降も東京や大阪など各地で行われ、動員記録を更新している。

個人的には、02年に北京工人体育館で行われた「日中国交正常化30周年記念コンサート」を取材した。もう20年も前のことなので記憶がやや薄れているが、レセプションや記者会見も含めて、中国側からかなり歓迎されていたことを覚えている。

もっといえば、この北京でコンサートを開催する会見を行った際には、当時の江沢民国家主席も出席し、GLAYと握手も交わした。国家主席と日本のミュージシャンが笑顔で対峙(たいじ)したのだ。現在の日中の首脳が会談すらもてない状況をかんがみると、隔世の感がある。まさに、既に歴史になっていると思わざるをえない。

そんな一時代を築いたGLAY。メンバーも49歳のJIROを除いて、3人が50歳となったが、ステージを見る限り、現役感バリバリのパフォーマンスを見せている。

今回は昨年10月に発売したアルバム「FREEDOM ONLY」を引っ提げてのツアーだ。同アルバムは、King Gnu常田大希が主宰のクリエーティブチームPERIMETRONがアートワークを手掛けており、自由の象徴であるピーターパンをベースに、自由とは何かを問い掛ける内容だ。「BETTY BLUE」では、同曲にゲストボーカルとして参加しているAwesome City ClubのPORINが特別ゲストとして登場した。

現役感を醸し出しているのは、常に、新たなミュージシャン、新しい才能とコラボし、常に前に進んでいくというGLAYの姿勢だと思う。そこには、過去の遺産で、ファンを喜ばせようという、言葉は悪いが安易なスタンスはないし、俺たちがレジェンドだという思い上がりもない。常に新しい音楽、斬新なステージを作りたいという貪欲な思いに頭が下がる。

TAKUROとTERUによるバンド結成は88年なので、今年は35周年にあたる。当時からのファンももちろんいるだろうが、今回のツアーを見る限り、当時のGLAY世代の子どもにあたる観客も多い。50歳というと、世間からはおじさんと認定される世代ではあるが、そんな認知にとらわれないGLAYのステージを見て、背筋が伸びた。