北京五輪は20日に閉幕。フィギュアスケートで団体、男女シングルを合わせて4個のメダルを獲得した日本選手らは同日のエキシビションに登場し、羽生結弦(27=ANA)らが華麗な演技を披露した。2014年ソチ五輪女子代表でプロフィギュアスケーターの村上佳菜子(27)は今大会の主役を担った羽生の今後について言及。本人が苦悩してきたクワッドアクセル(4回転半ジャンプ=4A)の封印と当面の休養を勧めた。


 団体で銅メダルを獲得した日本は、男子シングルスで鍵山優真(18=オリエンタルバイオ・星槎)が銀メダル、宇野昌磨(24=トヨタ自動車)が銅メダル、94年ぶりの五輪3連覇が期待されていた羽生は4位だった。

 村上は「日本の選手は素晴らしかった。鍵山選手は大舞台で自信をつけたので、さらに経験を積んで成長してくれる。5回転ジャンプにも挑戦していきたいそうなので今後が楽しみ。宇野選手は鍵山選手が出てきたことでスイッチが入ったと思う。今後どう伸びていくか」と語った。

 また、世界初のクワッドアクセルに挑んだ羽生については「最初は決まったと思ったんですけれど…。チャレンジする姿を見せてくれた。行きつくところまで行きついた羽生選手だからこそ4A挑戦だったのでしょう」と振り返る一方で、再挑戦には「成功して笑っている姿を見たい気持ちもあるけれど、ここまで羽生選手は4Aにすべてをかけてつらい日々を過ごしてきたと思うので、正直もう無理してほしくない気持ちもある」という。

 村上は、その理由として「羽生選手は(昨年12月の)全日本選手権のときから、インタビューなどを見てすごく苦しんでいる印象があって…。それに新しいジャンプを跳ぶのって本当に恐怖なんです。失敗して転倒すれば大ケガをするかもしれないし(着氷時は)足首に大きな負担がかかるなど、本人も言っていたように本当に大きなリスクがありますからね」と説明した。

 さらに「(4Aは)練習からかなりの集中力が必要で、長い期間続けているのは精神的にきついと思うんです。しかも(新型)コロナの影響でコーチのいるカナダに行けないため、日本で1人トレーニングを続けるのは意識を閉ざしてしまいたくなるような時もあったはず」と指摘。その上で「会見(14日)でも羽生選手がなかなか言わない『満足』という言葉を使っていたのも驚きでした」と男子エースの胸中を察していた。

 今後については「どうでしょうか。羽生選手の決断を支持しますが、今は早急に判断しないでほしい。ここまで五輪に向けて自分を追い込んできたわけですし、今はまだアドレナリンが出ている状態だと思うので、休息を取って1回心も身体もリセットしてからどうするかを決めてほしい」と当面の休養を勧めた。

 2010年バンクーバー五輪銀メダルの浅田真央もソチ五輪で6位の後に「ハーフ、ハーフ」との名言を残し、休養を発表。その1年後に現役続行を宣言した。村上は「まずはしっかり休んで。心身ともに休養しながらラフにスケートを楽しんでほしい。それに4Aの縛りから解放された時にまた、違う景色も見えると思う。そこで自分と向き合えばいいのでは」と話した。


 ☆むらかみ・かなこ 1994年11月7日生まれ。愛知・名古屋市市身。幼少期からフィギュアスケートに取り組み、2010年世界ジュニア選手権優勝。同年にシニアデビューし、グランプリシリーズ(GP)ファイナル3位、14年1月の四大陸選手権を初優勝した。同年ソチ五輪は12位に終わり、17年4月に現役引退を表明。現在はプロフィギュアスケーター、タレントとして活動。162センチ。