【赤坂英一 赤ペン!!】DeNAの宜野湾キャンプ、14年ぶりに古巣へ帰ってきた石井琢朗野手総合コーチの熱心な指導ぶりがひときわ目立つ。早出打撃練習、走攻守にわたるチームプレーを重視した全体練習、最後にはまた居残り特打で個別に打撃指導。一日中、ほとんどじっとしていないのだ。

 かつてのチームメートの三浦監督も、こう言って感服している。

「総合コーチとして来てもらっているので、打撃だけでなく、守備、走塁とあらゆる面で貢献していただきたい。石井さんは勝つためのノウハウ、練習メニューが豊富な方ですから。僕たちもいろいろな新しいことをどんどんやっていかないと」

 例えば午前の守備練習では、田中浩康内野守備走塁コーチと並んで石井コーチ自らノック。捕手が二盗を刺す練習でも、石井コーチが投手として投げながら、野手に一塁から二塁へ走らせる。

 この時、打席には相川亮二バッテリーコーチが立ち、捕手の二塁送球の球速をストップウオッチで計測。この反復練習の合間、注意するべきことがあると、石井コーチはすぐに一塁ベース周辺へ走者と捕手を集め、あれこれ指示を飛ばすのだ。

 そうしたきめ細かさに三浦監督は感心しきり。

「石井さんは総合コーチとして、各担当コーチともしっかり連携を取っている。打撃では田代さん(富雄巡回打撃コーチ)、鈴木さん(尚典打撃コーチ)、守備は田中コーチ、走塁は小池(正晃外野守備走塁)コーチと確認作業をしながらいろんなことを進めてるんです」

 室内練習場では毎日約1時間半、連係プレーやサインプレーの秘密練習が行われる。このやり方がまた極めて緻密だ。

 三浦監督が続ける。

「そりゃ、連係やサインプレーが失敗することもありますよ。だからそのたびに投手、捕手、野手の間で、プレーの合間と練習後にしっかりと確認作業をやるんです。まずは選手に発言を求めて、気づいたこととか考えを言ってもらう。そういう声をコーチが聞いてフィードバックしていくと。そうやって、全体ですり合わせていくわけです」

 石井コーチはキャンプ序盤、「チーム単位での練習を増やして力を上げたい」と話していた。私が声をかけたら「大したことはやってませんよ」と笑ってかわされたが、三浦監督は十分な手応えを感じているようだ。

 ちなみに、私が取材に訪ねた15日、石井コーチはオースティン、ソト、大田泰示らの打撃投手も務め、200球近く投げていた。タフネスもまた相当なものである。

 ☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。日本文藝家協会会員。最近、Yahoo!ニュース公式コメンテーターに就任。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」(講談社)など著作が電子書籍で発売中。「失われた甲子園」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。他に「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。