演劇界ではジャニーズ所属のタレントが主演する舞台が増えているけれど、「演劇界の芥川賞」と言われる「岸田國士戯曲賞」の最終選考作品の中にジャニーズのグループ「NEWS」の加藤シゲアキ(34)の作品「染、色(せんしょく)」がノミネートされた。

岸田國士戯曲賞は、劇作家岸田國士の業績を顕彰した若手劇作家の育成を目的とした賞で、新人の登竜門とも言われている。今回で66回を数え、過去に井上ひさし、唐十郎、つかこうへい、野田秀樹、松尾スズキ、三谷幸喜、宮藤官九郎らが受賞している。そんな伝統ある戯曲賞にノミネートされた「染、色」は、15年出版の短編小説「傘をもたない蟻たち」に収録された「染色」を加藤自ら脚本を書いて舞台化したもので、美大生のリアルな日常と葛藤を描く青春ドラマ。21年に加藤も出演して上演された。その時に演出した瀬戸山美咲は劇作家でもあり、今回の最終選考に瀬戸山の作品「彼女を笑う人がいても」も残っている。

岸田戯曲賞を主催するのは、かつて演劇雑誌「新劇」を発行していた白水社。同社編集部から依頼された演劇記者、演劇評論家をはじめとした演劇関係者が11月ごろにそれぞれ推薦する作品を挙げて、それらをもとに編集部関係者らが脚本を取り寄せて読み、最終選考に残す作品を選んでいる。毎年、50作品前後を読んでいるそうで、最終選考に残るだけでも難関といえる。

ちなみに、最終選考にあたるのは野田秀樹、岩松了、ケラリーノ・サンドロヴィッチら日本演劇界を代表する劇作家たち。加藤は21年に小説「オルタネート」で直木賞にノミネートされ、受賞は果たせなかったが、吉川英治文学新人賞を受賞している。昨年の岸田戯曲賞は「受賞作なし」に終わったが、今年はどうなるのか。「染、色」など最終選考に残った9作品はwebで3月1日まで無料で閲覧できるので、興味のある人にはお勧めです。注目の最終選考は28日午後5時から始まる。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)