プロレス界の「黒いカリスマ」こと蝶野正洋(58=東スポグループ強化部長)が、トラブル続きだった北京五輪閉幕から1週間を迎えて黒く総括だ。大騒動となったフィギュアスケート女子、カミラ・ワリエワ(15=ロシア)のドーピング問題の裏にはウクライナを巡る世界情勢があると指摘し、近代五輪のあり方を疑問視。スキージャンプ混合団体で起きた高梨沙羅(25=クラレ)らのスーツ規定違反失格騒動には「ネズミ捕りにつかまったようなもの」と同情し、運営側の責任を追及した。

 ガァァッデム! 蝶野だ。北京五輪も閉幕したな。注目を集めたのはやっぱりフィギュアスケート女子のドーピング問題か。

 俺が見てて不快だったのは、あれ、完全に政治がからんでんじゃないのって思えてしまうんだ。今の五輪は政治利用の場だからな。要はウクライナ情勢のプロパガンダに、ドーピングと五輪が利用されたんじゃないかって。西側からしたら、ロシアはドーピングをするような、スポーツマンシップにのっとらない国ですよというイメージ戦略には最高に使えるわけ。世界中に偏見を植えつけられるからな。

 そもそも選考会を兼ねた昨年12月の大会の検査結果が、五輪期間中に出るってこと自体がおかしいよ。本番までに結果が間に合わないなら何のために検査したんだ。予選の体を成してないじゃねえか。もはや悪徳プロモーターのやり方みたいだよな。

 コーチが黒幕とか組織的にドーピングやってるなんて話もあるけど、どうだろう。スパイ映画じゃないけど、ロシアのコーチの一人が実は西側のスパイで、15歳の女の子が米露の争いに巻き込まれてワナに引っかかっちゃった可能性だってあるんじゃないかって思うぞ。

 結局、IOC(国際オリンピック委員会)が五輪と政治を切り離さない限り、今後もこういう問題は絶対になくならないよ。(1984年)ロサンゼルス五輪あたりからマネーゲームになっちゃった。ところがマネーゲームの行きつく先って戦争じゃない。どうしても今回のトラブルは、ウクライナ情勢とからまってると思えてしまうよな。

 例えばスピードスケートの女子500メートルで優勝したエリン・ジャクソンは、米国の予選で落ちてたんだ。でも出場枠を他の選手が譲渡して金メダルを取ったと。これ、俺は「いい話」でとらえられたけど、本来なら落選の選手が出るのは違反なんじゃないかって言うやつが出てきてもおかしくないわけ。その影響でメダル取れなかった人間もいるんだからな。

 要はドーピング問題もその人の立場や環境によって見え方は全然違う。なら、あなたはどこから見ますかって話だろ。俺は五輪を見るなら表から見たい。最近は裏の世界情勢とか、そういうとこ出しすぎなんだよ。もう五輪はスポーツ欄だけで扱えばいいんだ。社会面のやつらやワイドショーは扱わなくていいよ。

 とはいえ、やっぱりフィギュアって冬季五輪のメインだなって思ったな。ただ今って、ルッキズムとか性差別がいろいろ言われてて、ミスコンが批判される世の中じゃない。その流れが行き過ぎて「美」を競うフィギュアが、何年後かにはなくなっちゃったりしたら大変だよな。

 あれって音楽とか衣装とかの演出も含めた美しさも競い合ってるわけでしょ。ある程度の規定はあると思うんだけど、本当だったら衣装も含めてみんな同じ条件でやるのがスポーツの基本だという見方もできるよな。だって高梨沙羅は数センチ単位のスーツ規定違反で失格になってしまってるわけだから。

 彼女がかわいそうだと思うのは、そもそも事前に服装のチェックをしないまま飛ばしてるんだったら、もう運営側が悪い。はっきり言ってネズミ捕りにつかまったみたいなものだと思うよ。要は、いかにもスピード違反が起きるようなところで警察が待ち構えてたりするんだけど、だったらその手前に立って「ここはスピードを出しちゃいけないとこですよ」って注意をして事故を減らすのが、警察が本来やるべきことじゃねえか。

 今のジャンプって、ちょっとしたスーツのサイズで記録が変わるところまで技術が進化してるんだろ。それが分かってるんだったら、事前にチェックと勧告をするのが運営側のやるべきこと。それができなかったんだから、むしろ運営側が罰せられるべきだろ。

 まあ、事前にチェックが行われているプロレスでも、明らかに凶器が入っているアブドーラ・ザ・ブッチャーの靴をレフェリーが見逃してしまっているんだけどな…。

 とにかく! 選手は4年に1回の舞台のために努力をしてるんだ。五輪という舞台でこれ以上のトラブルが起きないよう、いろいろなことを考えなければいけない時期に来てるのは確かだと思うぞ。アイム・チョーノ!