ノルディックスキーのW杯ジャンプ女子個人第14戦(2日=日本時間3日、ノルウェー・リレハンメル、ヒルサイズ=HS140メートル)で北京五輪以来の出場となった高梨沙羅(25=クラレ)が1回目130メートル、2回目132メートルの計291・5点で優勝し、今季2勝目、W杯通算62勝目をマークした。五輪の団体戦ではスーツ規定違反で失格となり、大号泣。自身の進退にも言及していたが、復帰戦で悪夢を完全に払拭し、再スタートした。

 日本女子のエースがついに再起した。個人、団体ともにメダルに届かなかった北京五輪後に再開したW杯初戦を欠場し、その動向が注目されていた高梨は約1か月ぶりとなる復帰戦に出場。予選を4位で通過したエースは1回目に130メートルを飛んで2位につけると、2回目のジャンプで132メートルをマークし、計291・5点で逆転優勝した。

 北京五輪金メダルで今大会3位となったウルシャ・ボガタイと銅メダルで2位になったニカ・クリジュナル(ともにスロベニア)らの実力者を上回った。W杯通算111度目の表彰台に上がった高梨は「オリンピック後はとてもナーバスになっていた。どうしていいかわからなかった」と話しつつも「久しぶりに飛べて純粋に楽しいという気持ちで試合に臨めた。五輪の後ということもあり、今までで一番うれしい優勝になった」と笑顔を見せ、声を弾ませた。

 高梨は3度目の出場となった北京五輪の個人ノーマルヒルで4位、混合団体ではスーツ規定違反により失格となり、日本のメダル獲得に貢献できずに号泣。各国にも多くの失格者が出たことで大きな波紋を広げる中、自身のインスタグラムを更新し「皆様を深く失望させてしまい誠に申し訳ありませんでした」と謝罪。その上で「謝ってもメダルは返ってくることはなく責任を取れるとも思っておりませんが、今後の私の競技に関して考える必要があります」と投稿。ショックのあまり引退を示唆するなど、自身の去就にも踏み込んだ。

 失意の北京五輪後は日本に帰国せず、W杯に参戦するため、欧州に向かった。1998年長野五輪ジャンプ団体金メダリストで日本選手団の原田雅彦総監督は高梨について「非常に責任感の強い選手の一人。彼女の気持ちを考えると、言葉もない」とし「彼女の置かれている状況を考えると、スキー連盟と連携し合いながら心のケアに全力でサポートしたい」とコメントしていた。

 しかし再開初戦となったW杯ヒンツェンバッハ(2月25~27日、オーストリア)大会の個人と団体戦を欠場。心身の状態が懸念される中、26日にはSNSを更新。現役復帰した男子マラソンの大迫傑の「もう一度闘いたい。勝ちたい」との投稿を引用し「hit me right in the feels(胸に刺さる)」と記すと、復活を願うファンやスタッフからのエールもあって再起を決意。迎えた復帰戦で最高の結果を出した。

 高梨は苦悩し、どん底に落とされた北京五輪からの再スタートについて「たくさんの方々に励まされ、支えられて、今ここにやっと立つことができた。何があっても最後まで走り続けなければいけないと思った」とコメント。ようやく悪夢を振り払ったのは間違いないようだ。