気象予報士の天達武史(46)が、フジテレビ系情報番組「めざまし8」(月~金曜午前8時)で気象防災キャスターとして活躍している。05年10月に前番組「とくダネ!」にレギュラーとして登場。小倉智昭キャスター(74)の「あまたつ~」という呼び掛けでお茶の間に定着してから約16年半。ファミレスの食材の仕入れ担当として天気に関心を持ち、テレビの世界へ。天気への、そして恩人の小倉キャスターへの思いを聞いた。【小谷野俊哉】

★6連続不合格

昨年4月期に「とくダネ!」から「めざまし8」へ番組が衣替え。「とくダネ!」に初登場したのは05年10月3日だ。

「22歳の時に気象予報士の勉強を始めて、半年に1度の試験で7回目で合格しました。26歳になっていました」

元々、神奈川・葉山にあったファミレスのデニーズで働いていた。

「3年制の専門学校を卒業したのが21歳。就職活動に失敗して、ずっとデニーズでバイトしていました。専門学校ではイラストの勉強をしてて、デザイナーになりたかったんですけど、ちょっと無理でした」

90年代後半、バブルのかけらもなくなって、景気は落ち込む一方の時期だった。

「ほんと、僕みたいなのはダメなんだなと思って。気象予報士を受けたきっかけは2つ。1つは、本当に僕は、何をやっても成功体験っていうのがなかったんです。それで、自分で成功体験を1つでも見つけないと、多分、今後生きていく意味がないんじゃないかと」

もう1つは仕事の必要に迫られてだ。

「勤めていたデニーズのすぐそばが、葉山の海。観光地だったから、天気で客数がガラッと変わっちゃうんですよ。晴れと雨の日で3倍ぐらい売り上げが違う。その時は発注業務、食材の担当もしてたので、毎日、天気予報をテレビで見てて、晴れるって言ってるからレタスをいつもの3倍とか。だけど、たまに外れると、店長とかに怒られるんですよ。それが嫌だったのもありまして」

★漫画にだまされ

新聞に載っていた気象予報士養成講座に見学に行った。

「漫画で授業やってたんで、これはいけるなと思ってお金を全部払ったんです。次に行った時から急に難しくなってだまされたなと思ったんですけど(笑い)。でもまあ、それがきっかけですよね」

気象予報士に合格してから、就職活動を始めた。

「資格を取って就職活動を始めたんだけど、これが全然ダメ。もう26歳で、気象予報士って書いたんですけど、全然かすりもしなくて、この資格ダメなんじゃないかと(笑い)」

だが、天は見放さなかった。

「たまたま気象予報士の通信講座を受けていた時期があって、日本気象協会の仕事が『受講経験者優先』で回ってきた。でもパソコンが全然できなくて、正直に言ったら『まあ、それは君の頑張り次第だから』みたいなこと言われて、なんとか入れていただいた」

04年4月、28歳で日本気象協会での仕事にありつくことに成功した天達気象予報士。これで運も向いてきたはずだが…。

「だけど、天気予報どころか、何にも原稿が書けなかったんで、もうめちゃくちゃすごい迷惑かけました。毎日、仕事終わってから終電まで『北斗の拳』っていうタイピングソフトを渡されて、ずっと練習していました。それで、3カ月ぐらいして指が覚えた。やっとスタートラインに立てたみたいな。最初は、毎日が、いつクビになんのかなっていう感じでしたね」

人より遅くスタートラインにつき、やっと走りだした。翌年、30歳になり10月から「とくダネ!」のレギュラーに抜てきされた。

「たまたまだと思うんですけど、オーディションがあったんです。履歴書を書いていたら、先輩が『お前は名前が天達だから、天気の達人にしろ』と。自分では全く思ってないですよ、そういうのは。半分ギャグみたいな感じで送ったら、目に留まったみたいなんですよね。なぜか、受かっちゃったんですよね」

★小倉キャスターに感謝

天達という、気象予報士になるためのような名字は、鹿児島が源流だ。

「横浜生まれで、横須賀育ちなんですけど、父が鹿児島の枕崎の出身。枕崎から発生した名前で鹿児島には100軒以上。あとは全国で、1県に1軒あるかどうか」

「とくダネ!」では小倉キャスターから「あまたつ~」と呼び掛けられて、フジテレビの屋外からお天気リポート。たちまち、日本中に名前が知れ渡った。

「今思えば、顔もよくない、しゃべりもうまくないような男を有名にしてくださった。あれがなかったら、僕はいないと思うんですよ。最初は、すごくクレームが来たらしいです。それでも、ずっと呼んでくださった。それで名前だけは、聞いたことがあるみたいな。今は小学6年になった息子にも、小さい頃は『あまたつ~』って呼ばれていました(笑い)」

小倉キャスターには、いくら感謝しても感謝しきれないという。

昨年4月期の改編で「とくダネ!」は終了。小倉キャスターをはじめとするキャスター陣は総取っ換えで、天達キャスターだけが残った。今はメインキャスターの俳優谷原章介(49)と「アマ×タニ天気」のコーナーを担当する。

「谷原さんは年齢が近くて、出身も同じ神奈川。そういう意味で言うと、お兄さんみたいな感じですね。しかも、谷原さんて、すごくいろいろなことを勉強されているんですよね。天気のことでも、これはということでも知っていることがありますし。ものすごく優しい方。メチャクチャ、バランスがいい。あれは反則ですよね。僕もおしゃれとかファッションが好きなんで、谷原さんの私服とかの着こなしも見ちゃいますね。それこそ『メンズノンノ』とか、出始めの頃から僕は読者として見ていたので、ちょっとドキドキしちゃった部分もあるんです。でも、仕事がすごくやりやすい。すてき! っていう感じですよね」

いまやベテラン気象予報士。10~12年にはオリコン「好きなお天気キャスター」を3連覇している。

「日本ってすごく天気の地域差が大きいんですよね。だから、全国47都道府県全部に住んで、天気をやりたい。北海道から沖縄まで1年ずつ。そういうのをやってみたい。行って初めて分かることがすごく多いんで、住んだらもっといろいろな、食とかいろいろな文化を学べるんだろうなと。それが終わったら世界もやってみたい。ヨーロッパの天気もすごく興味あるんで。でも、“人生100年”じゃ足りないですね(笑い)」

人生、照ったり曇ったり。雨が降っても、いつかは晴れる。雨風を避けながら、ゆっくり、しっかりと人生を歩いている。

▼「めざまし8」渡邊貴チーフプロデューサー

昨年4月に新しく番組がスタートしましたが、「とくダネ!」で人気だった天達さんをパワーアップした形で出演してもらう狙いで“続投”してもらいました。この時間の天達さんの天気は視聴習慣として残したかったんです。小倉さんの呼び掛けの「あまたつ!」から、谷原さんの「あまたつさん」に変化したことは大きい。小倉さんとの掛け合いは上司と部下みたいな形で、谷原さんとは対等な関係。天達さんの魅力はなによりも、親しみやすさ。柔らかい表情と情報量のギャップがすごいと評価も高い。これからも期待しています。

◆天達武史(あまたつ・たけし)

1975年(昭50)4月18日、神奈川県横須賀市出身。94年に神奈川県立津久井高卒業後、ファミレス「デニーズ」に勤務しながら、97年に御茶ノ水美術専門学校デザイン科卒。02年に調理師免許取得、7度目の受験で気象予報士試験に合格。04年4月から日本気象協会所属。05年10月~21年3月、フジテレビ系「とくダネ!」の気象キャスター。10~12年「好きなお天気キャスター」ランキング3連覇。21年4月からフジテレビ系「めざまし8」気象防災キャスター。172センチ。血液型A。

◆フジテレビ系「めざまし8」

月~金曜午前8時~9時50分の情報番組。コンセプトは「大人のめざまし」。俳優谷原章介と永島優美アナウンサーがメインキャスターを、倉田大誠、西岡隆洋、久慈暁子、堤礼実アナウンサーらが情報キャスターを務める。

※2022年2月27日本紙掲載

少年時代に野球に打ち込んでいた天達武史さん。むちゃ振りに応え投球フォームを披露してくれた(撮影・垰建太)
少年時代に野球に打ち込んでいた天達武史さん。むちゃ振りに応え投球フォームを披露してくれた(撮影・垰建太)