試合こそが最高の練習だ! 女子総合格闘技イベント「DEEP JEWELS 36」(3月12日、東京・ニューピアホール)で行われた「フライ級GP 2022」1回戦で、藤田翔子に戦慄の鉄槌でレフェリーストップ勝ちを収めた最強女王・中井りん(35)が、まさかの告白だ。

 1ラウンド(R)目、中井は相手の出方を見るような戦いぶりを見せた。空手出身で打撃を得意とする藤田に対し、スタンドでパンチを打ちながらけん制。ゴング直前にはテークダウンに成功するも決定機はなかった。

 だが最終2R、一気に仕留めにかかる。相手の放ってきたローキックをキャッチすると、そのままテークダウン。そこから流れるようにマウントポジションを取ると、パウンドで相手が動かなくなるまで殴り続け、終了まで残り22秒の4分38秒でレフェリーが中井に勝利を告げた。

 一見、攻めあぐねた展開にも見えるが、試合後の中井は「練習です」とまさかの言葉を口にする。愛媛・今治市の修斗道場四国を拠点とする中井は、都会のジムと違って試合をする機会自体が貴重だと強調。実際、今回も2年半ぶりの試合だったが、それだけに今回の試合でもできる限り〝経験値〟を積むことを狙ったのだという。

 中井を指導する修斗道場四国のWILD宇佐美館長は「相手の選手には申し訳ないですけども…」と前置きしつつ、こう明かす。「正直、始まってすぐにテークダウンすることはできました。でも、それでは何の練習にもならない。始まってすぐ勝つよりも(5分2Rの)10分経験した方が何十倍も練習になる」

 つまり試合時間をわずかに残してのパウンドアウトは、打撃系選手を前に最高の実戦練習をした上でインパクトも残せる最高の勝ち方だったというわけ。準決勝と決勝(5月8日、東京・後楽園ホール)に向けて貪欲に進化し続ける女王が、このまま一気にベルトまで駆け上がれるか。