〝バッド・ガイ〟よ、永遠なれ。米国のレジェンドレスラーで、WWEでは「レイザー・ラモン」のリングネームで活躍したスコット・ホールさんが14日(日本時間15日)に63歳で急死したことを受け、プロレス界の「黒いカリスマ」蝶野正洋(58)が追悼メッセージを送った。1990年代後半に一世を風靡したnWо(ニュー・ワールド・オーダー)と新日本プロレスの「TEAM 2000」で共闘した盟友はいたずら好きで有名で、WCW時代の全米生中継では蝶野が〝大問題発言〟を引き出された事件もあった――。

 複数の米国メディアによると、ホールさんは股関節骨折の手術後に3回の心臓発作を起こしたという。最期は生命維持装置を外され、静かに息を引き取った。WWEが死去を発表すると、世界中から悲しみの声が上がった。

〝バッド・ガイ〟の愛称で親しまれたホールさんは、1984年にデビューし新日本プロレスにも参戦。96年にハルク・ホーガン、ケビン・ナッシュと結成した「nWо」は日米で一大ムーブメントを起こした。2014年と20年の2回にわたりWWE殿堂入りを果たし、レイザーラモンHGとレイザーラモンRGによるお笑いコンビ「レイザーラモン」は、ホールさんのWWF(現WWE)時代のリングネームに由来する。

 突然の訃報を受けた蝶野は「ショックですよ。まだ63でしょ。若いね…。一度はアルコール依存症かなんかで体調壊して入院したけど、最近は元気になってるってイメージだったから」と故人をしのんだ。「若手の時からハンサムで身体能力がものすごく高い、バランスのいい選手だった。あとプロレス頭もものすごくよかった」

 ホールさんは「とにかくいたずら好き」の愛すべき仲間だった。「米国版ブッチャー(故橋本真也さん)みたいな感じ…まではいかないか。そこまで悪質じゃないから(笑い)。彼はすごくおちゃめだったよ」と振り返る。

 nWоが人気絶頂の97年、蝶野は新日本と所属契約を結ばずフリーとしてWCWに定期参戦。ライバル団体・WWEとの抗争の真っただ中だった。警戒心の強いホールさんやナッシュはハニートラップやトラブルを恐れ「外で飲めない」と語っていたのが印象に残っているという。

 両団体は毎週月曜日の同時間帯でWCW「マンデー・ナイトロ」とWWE「マンデー・ナイト・ロウ」がシ烈な視聴率争いを展開。レスラーやスタッフの引き抜き合戦のみならず、スパイを雇っての情報戦まで展開された。「スパイがいるから大会前にわざとダミーのカードを発表したりね。ある時、1発目はジュニアの試合って発表していたんだ。そうしたら向こうもジュニアからスタートするから『やっぱりな。よし、nWо全員リングに上がってくれ』って。『お前らスパイ使ってジュニアの試合、やってんだろ』ってやってるの。マイクアピールで」

 オープニングからnWоが出てきたことで、その日の視聴率はWCWが大幅にリード。ディレクターからも「どんどんマイクを引き伸ばしてくれ」と指示が飛んだ。

「その時に確かホールがいたずらで、あまりしゃべれない俺にマイク、持ってきたの。『え、俺かよ?』って思ったけど、みんなしゃべり疲れちゃってるからしょうがねえなって。『フ×××ユー! WWE!』って言っちゃってさ。みんなひっくり返っちゃった。生中継で禁止用語、言っちゃったよ、コイツって。もうマイク、回ってこなくなったよね(笑い)」

 一方、仲間思いでも有名だった。97年5月の大阪ドーム大会では蝶野、ホールさん、ナッシュのトリオで武藤敬司、(リック&スコットの)スタイナー兄弟とのドリームマッチが実現。「米国にいる時は彼らがリーダーだから俺は後ろを歩いてるだけでよかったけど、逆に日本に来たら俺に先頭を譲ってくれたり。キャリアが変わらないって関係もあったけど、ものすごく気配りをしてくれたよね。社交性がすごくあった」と懐かしんだ。

 プライベートでは息子思いで、現在プロレスラーとして活動しているコーディ・ホールの話をよく聞かされた。「本当に楽しい思い出しかない。体調を壊してから50代とかはつらい時期もあったと思うけど、もう少し長生きしてもらいたかった。息子さん(コーディ)をすごいかわいがってるイメージがあるから、彼にはこれから頑張ってお父さんみたいなレスラーになってほしいけどね」。ホールさんがプロレス史に残した多大な功績は、いつまでも色あせることはない。

☆スコット・ホール 1958年10月20日生まれ。米フロリダ州タンパ出身。84年10月にデビューし、87年に新日本プロレス参戦で初来日。92年にWWE(WWF)入りすると「レイザー・ラモン」の名で活躍。96年にWCWに移籍し「nWo」を結成。2001年には新日本マットで蝶野率いる「TEAM 2000」に加わった。同年9月には武藤敬司の持つ3冠王座に挑戦。02年にWWEに復帰。04年には「ハッスル」参戦で来日した。得意技はレイザーズ・エッジ(ハイジャックボム)。決めゼリフは「Hey yo!」。196センチ、128キロ。