偉大な叔父を超える日は来るのか――。大相撲春場所3日目(15日、大阪府立体育会館)、新小結豊昇龍(22=立浪)が大関貴景勝(25=常盤山)をすくい投げで撃破して初日を出した。場所前には叔父の元横綱朝青龍(41)からハッパをかけられており「何より勝てたことがよかった。初日、2日目は負けたけど、これから頑張りたい」と安堵の表情を浮かべた。

 22歳の若武者に大きな期待を寄せるのは、元横綱だけではない。15歳だった豊昇龍をモンゴルから千葉・日体大柏高に入学させた元校長の鈴木誠治氏もその一人だ。

 豊昇龍は当初レスリング部に入部も、大相撲を観戦してすぐに心変わり。鈴木氏は「(留学に尽力した)元朝青龍から厳しいことを言われたようだが、本人は『必ずやり遂げる。何が何でも相撲がやりたい』と固い決意だった。当時の相撲部の監督からは『体は小さいけど体幹が素晴らしい。バネがあって体のバランス、足腰が整っている』と将来性を見いだされていた」と振り返る。

 その後、素質が開花。頭角を現して大相撲の道に進んだが、叔父は一層、厳しくなったという。「(豊昇龍は)頻繁にモンゴルに報告を入れているみたい。負けた時は『また何を言われるか分からないんですよ』と参った顔をよくしていた。私は『お前が負けたから仕方ないだろ』と言いましたけど、とにかくあの子にとってみると叔父さんがおっかなくて仕方ない」(鈴木氏)

 もちろん、元朝青龍の厳しさは愛情の裏返し。鈴木氏は「豊昇龍の高校在籍時に、相撲部の監督が交代する事態があった。すると『先生、大丈夫ですか? 相撲部をよろしくお願いしますね』と叔父さんから電話があった。やっぱり心配だったんでしょう」と〝秘話〟を明かした。

 その鈴木氏は「体幹はしっかりしているので、体重を増やして筋肉がついて相撲の形ができたら(元朝青龍を)超える日が来るんじゃないかと。体幹の良さは豊昇龍の方があると思う」。大横綱の血を引く〝サラブレッド〟の成長が楽しみだ。