ここで踏みとどまれるか。大相撲春場所5日目(17日、大阪府立体育会館)、大関カド番の正代(30=時津風)が幕内阿武咲(25=阿武松)を上手投げで下し、ようやく初白星。取組後は「(連敗中は)モチベーションは下がっていた。これをきっかけに変わってくれたら」と安堵の表情を浮かべた。

 ただ、初日から4連敗後にカド番を脱出した前例は皆無とあって、苦しい状況であることに変わりはない。先場所後には新型コロナウイルスに感染。稽古不足のまま本番を迎えたことも、不安に拍車をかけている。

 元幕下照瀬川で正代の親戚にあたる正代邦昭氏は「場所前に(本人と)電話で話して『体調はやっぱりよくない。コロナになって力が出ない』と声にも元気がなかった。今場所を見る限り、肌に張りがなく表情も違う。体調がいい時って、肌ツヤもいいですから」と表情を曇らせる。

 カド番脱出は「現状を見ても厳しい」と言いつつも「たとえケガをしていても、気持ち次第で勝てるもの。私も15年(力士として)やってきて、精神的な部分が勝敗に関わってくると思っている。頑張ってほしい。一つ勝てば気持ちも流れも変わってくるんじゃないかと期待をしている」と祈るような思いで見つめている。

 正代自身も「結果は後からついてくると思うので(カド番は)考えないようにしている。今日みたいな前に攻める相撲を取りたい」と必死そのもの。〝土俵際〟からの大関残留へ向けて、目の前の一番に集中する構えだ。