例年との違いには理由がある。阪神・藤浪晋太郎投手(27)が18日のオリックス戦(京セラ)に先発し、5回2失点(自責点1)で公式戦前最後の登板を終えた。

 開幕投手に内定していた青柳晃洋(27)が新型コロナウイルスの陽性判定を受けたことで、当初は26日の開幕2戦目(対ヤクルト)に登板予定だった藤浪は1日繰り上がって2年連続で大役を務めることになった。この日は最速160キロの剛速球から110キロ台のカーブに130キロ台のカットボール、スライダー、140キロ台のスプリットという多彩な投球で、球数こそ97球とかさんだが、4安打、6奪三振、2四球は上々の内容。

「〝開幕代行〟なので、あまり気負わず。力み過ぎず、落ち着いて入れるようにしたいです」と自身初の開幕戦勝利を見据えた。

 オープン戦4試合に先発し、計16回を投げて防御率2・81。課題の制球面も6四球と安定し、突発的に制球を乱し、いたずらに走者をためる場面もなく、好不調を問わず〝試合を壊さない〟投球を続けている。

 ライバル球団の関係者は藤浪の好調の要因に捕手の気遣いを挙げる。ここまで受けてきた梅野、坂本の2捕手は藤浪が腕が振れなくなるようなことがないよう、細やかな配慮を欠かしていないという。

 どういうことか? 藤浪には直球がシュート回転して右打者の内角に抜ける傾向があり、逆にスライダー系は引っかかって左打者の内側に曲がり過ぎるクセがある。これを踏まえてミットを構えるケースがあるという。

「例えば左打者のアウトローに真っすぐを要求するとき、ミットは少しホームより、逆にスライダーは左打者に寄って構えても、ミットは真ん中に残したままとか。どんな投手でも試合では力みますから。球の強さ自体をなくさないよう、その力みを生かして、厳しいところでストライクが取れている印象。投手目線に立った視覚的なものでしょうけど、乗せるのがうまいなと思います」(セ球団スコアラー)

 最初から厳しいコースを要求するのではなく、あえて狙いより甘い位置にミットを構える。自然と〝散る〟ことを想定したリードで、結果的に厳しいコースにもボールが行くようになっているというわけ。気分良く、ストライク先行の投球ができれば藤浪は怖いものなし。今年こそ完全復活なるか。